(別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.38掲載)
人と関わることが多いぶん、休日、リビングでひとりで過ごす時間が大事
北に鎌倉山があり、南に相模湾がある、自然豊かな住宅街。その一角に、小室裕子さんが3年前から夫の剛さんと暮らす一軒家があります。
7年前、鎌倉に夫婦で営むホテル「aiaoi(アイアオイ)」をオープン。仕事をともにするふたりは、休日はほぼ別行動。
家でじっとしていられないという剛さんは外へ。その間、裕子さんは家でひとりの時間を過ごします。
その日の気分でおいしいお菓子を食べたり、春夏は裁縫、秋冬は編み物と服づくりを楽しんだり。
「クラシック音楽はそんな時間に聴くことが多いのですが、どんな曲や楽器編成が自分に響くのかがそのときどきで変わるので、内面を見つめる助けになっています。弾く人や指揮者によっても違いがあると知ってから、ピアニストや指揮者で曲を選ぶのも楽しい。レコードはCDよりも、その変化の可能性や振れ幅が大きいところにロマンを感じます」
本は以前はカフェなどで読んでいましたが、いまは心が休まる家で、集中して読む時間が至福だそう。
「リセットしたり、考えを整理したり、新たな考えが生まれたり。リビングでひとりで過ごす時間は大事ですが、それはいつもはひとりではないからだと思います」
ホテルでお客さまに心地よく過ごしてもらいたい。そうして人と触れ合う仕事を大事にしているからこそ、静かに自分を整える、自宅でのひと時が必要となるのかもしれません。
小室裕子さんのリビングでの「私時間」4つ
ME TIME_01
とっておきのお菓子とお茶を楽しむ
ふだん甘いものはさほど食べないが、“とっておき”があるときはコーヒーか紅茶とともに楽しむ。
「食いしんぼうの姉がくれるお菓子は特別。おいしいお菓子を少しだけいただくのが贅沢だなと思っています」
ME TIME_02
レコードでクラシック音楽を聴く
窓辺のベンチにこの家に来てから購入したレコードプレーヤーを置き、夫婦ともに親しい画家・鈴木知道さんの絵を飾ってお気に入りのコーナーに。
レコードはベンチ下に収納。
「クラシック音楽が好き。ラジオで流れてきたり、エッセイや物語に出てきたり、映画音楽として出合うことが多いです」
ME TIME_03
編み物をする
「何をつくるか考えて手を動かす、という一連の作業がいいアウトプットに」
今年はフードのようにかぶれるマフラーを。
ME TIME_04
長編小説を読む
「周りの音や情報に影響を受けることなく、ぐっと集中して世界観に浸れるので、物語は家で読みます。冬はさらに集中力が高まるので、長編を手に取ることが多いです」
日中はソファで、夕暮れ時に西側のベンチに移動。光を追いかけながら、暗くなるぎりぎりまで電気をつけずに文字を追っているそう。
〈撮影/星 亘 構成・文/増田綾子〉
小室裕子(こむろ・ゆうこ)
都内の会社で販売促進の仕事に従事したあと、2012年に剛さんと結婚し、神奈川県鎌倉市に移り住む。2016年、剛さんとともに鎌倉の海辺にある築40年超のビルの3階に、6部屋の小さなホテル「aiaoi(アイアオイ)」をオープン。2020年にホテルにほど近い場所に家を建て、ふたりで暮らす。最近、夫の影響で登山が趣味に。http://aiaoi.net/
※ 記事中の情報は取材時のものです
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一田憲子さんが編集を手がける『暮らしのまんなか』vol.38。暮らしの実例12軒でお見せします。
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3章は「サステナブル=持続可能な収納」。あれこれ収納グッズをそろえて、部屋を片づけても、1週間もしたら、またごちゃついて……。収納で一番大事なことは、サステナブル=持続可能であるということ。「私でもできること」を見つけ、長持ちする収納システムをつくってきた、5人を取材しました。