(『天然生活』2020年3月号掲載)
店の一角でもある台所をきれいに整える。土切さんの夜長仕事
シャープナーで刃を研ぐ
包丁の研ぎ仕事は夫の担当ですが、本格的な研ぎ作業よりも前段階にシャープナーで研ぐのが土切さんの夜仕事のひとつ。
「いわゆる包丁研ぎ機は包丁しか研げないけれど、これは小ぶりなシャープナーを刃に当ててやさしくなぞるだけなので、ピーラーや波刃のパン切り包丁などにも使えるんです。驚くほど切れ味がよくなりますよ」
スイス製の「イスタースタンダードシャープナー」
使ったせいろを定位置に並べる
15年ほど前、現在の家に転居した土切さん。当時、キッチンをリフォームし、その一角に明かり取りも兼ねて天窓を付けた。
「日がちょうど当たる場所に食品庫を置いたので、その壁にせいろやかごなどを掛けて収納すると乾燥も兼ねていいなと思いついたんです」
晩ごはんに使ったせいろは、汚れていれば軽く水洗いをして、必ず、この場所へ。ダイニング側からこの壁が見える光景もかわいらしい。
調味料や油を容器に詰め替える
ヘアライン加工の作業台に白いタイル。どちらも隅々まで磨き上げられてピカピカです。
また、砂糖や塩、オイルなど、よく使う調味料は作業台の上に出ているのにすっきり整って見えるのは、ガラス製の容器などに移し替えられているから。
「気づいたときに補充しているけれど、まとめて夜にやることが多いですね」
使いやすいサイズ感や液だれしないものなど、お眼鏡にかなったものばかり。
自宅を改装した店舗は、愛する道具が集まる場所
築40年ほどの自宅を改造し、2年前に台所道具を取り扱う実店舗を構えた土切敬子さん。
土切さん自身が使って本当に使いやすいと感じたものだけを並べているとあり、「これはここが優れていて」「これはこんなときに便利で」など、どんなに小さなものでも、実に具体的かつ、道具への愛情のあるコメントを聞くことができます。
道具を長く使いたいから――。土切さんの手入れを見ていると、そんな思いを感じさせます。
「包丁やピーラーなどの刃を研ぐシャープナーは、もともとはお客さんが使ったのを薦められ、実際に使ったらとてもよかったので、お店でも取り扱うようになりました」
そういったやり取りが楽しいんです、と笑う土切さん。
“使ってこそ”の台所道具。長く気持ちよく使うため、今宵も道具の手入れにいそしみます。
〈撮影/大森忠明 取材・文/結城 歩〉
土切敬子(つちきり・けいこ)
テキスタイルの企画デザインの職を経て、2017年、東京・三鷹市で台所道具の専門店「だいどこ道具ツチキリ」を開く。夫と娘の3人暮らし。
インスタグラム:@daidoko_tsuchikiri
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです