(『天然生活』2021年6月号掲載)
引き算クローゼットの道
必要のないものを見極め、理由を突き詰めてこそ、リバウンド知らずに。
1 行動範囲と必要な服を書き出す
最初にすべきは、自分のライフスタイルと行動範囲を知ること。頭で考えるだけでなく、実際に書き出して目に見える状態で確認することが大切。
ふだん自分がよく行く場所や、そこですることなどを書き出し、そこで着ている服、あるといいなと思う服を書き出してみましょう。
また、過去1~2カ月の間に、行った場所や、会った人、その日の服装を書き出すのも効果的。その過程で「カジュアル服が多いけれど、案外、改まった場への参加が多く、そのときの服装が足りていない」など、ワードローブの弱点に気づくはずです。
ライター・フクヤマの場合は、家も取材先も子どもの学校も、いつだってねずみ色か紺色のニットとゆるパンツ。たまに買ってしまう“ちょっとしゃれた服”は暮らしに必要なし。
2 靴を見直してみる
実は、よく履いている靴こそ自分のライフスタイルを顕著に表しています。
「同じ種類の靴が何足もあるのなら、いまの暮らしはその靴で出かけられる範囲が多いということ。さまざまなタイプの靴があるのなら、変化のある毎日を送っているのでしょう。一方、最近履いていない靴は、自分の暮らしはその靴が必要な場所から遠ざかったことを示しています」
金子さんの場合はほぼ、近所を歩くスニーカー類、そして趣味のアウトドアのための登山靴。 “お出かけ”はほとんどないので、パンプス類は2足あれば十分。
レースアップシューズが好きでよく買うけど、取材先で靴を脱ぐことが多く、ほとんど履いていないかも。週末もだらけていて、スニーカーで近所のスーパーしか行かない……。
3 本当に必要な服を書き出す
実際の行動範囲を書き出し、自分がよく履いている靴を見つめ直すことで、ぼんやりとしたイメージでしかなかった、“自分の現実の暮らし”が明確になりました。
本当は必要でなかったのに、やたら枚数を持っていた服。本来はもっと必要なのに、圧倒的に足りていなかった服。それらを整理し、補充することで、「服はたくさんあるのに、着ていく服が何もない」という状態から脱却することができます。
ただ、やみくもに買いそろえるのは危険。増やすときは、しつこいくらいに吟味することが、引き算クローゼットのルール。
つい買ってしまう“勝負服”。私はいまさら、いったい何に勝とうとしているのやら。クローゼットにあると気持ちは上がるけれど、その価格を思い出すといつも動悸がします。
4 ファッションの軸を決める
必要な服がわかったら、さらにもう一歩踏み込みます。それは、自分らしさを表現する軸を決めること。
「“軸”というと、なんだか大それたことのように感じますが、決め方は簡単。『最後に一着だけ手元に残すなら、どれを選ぶか? 』と自分に問いかければいいだけです」
この一着はきっと、あなたが自分らしくいられて、デザインも色も、もちろん着心地もお気に入りであるはず。
「いってみれば、ファッションに関する心のよりどころですね。この軸となる服から大きく外れていなければ、服選びをまず間違えることはありません」
私の場合、グレーのニット(またはスウェット)に紺のパンツが着ていて落ち着きます。トップスもボトムスもゆるめシルエット。首まわりは詰まっているよりVネックが好き。
5 クローゼットの服を○△×に分ける
持っている服を全部出して、活用度の高いものは○、○ランクより活用度は低いけれど処分するにはもったいない服を△、処分していいと思うものは×に分けます。
とはいえ、△が一番の悩みどころ。△にした理由が「汚れがついている」「ファスナーが壊れた」など、リペア次第で直るものなら○に格上げ、「高かった」などの役立つか否かに関係ない理由なら×に格下げです。
「高かった服は処分しづらいものですが、ここでの判断基準は、あくまで“コーディネートの役に立っているか? ”だけ。シビアに服を見つめ直しましょう」
残ったのはほぼ、グレーと紺と白と黒とベージュ。なんだかさみしい気もするけれど、振り返るとここ半年、これ以外の色の服を着た記憶もないから、これが正解なのでしょう。
6 ×を処分した理由を検証する
×の服を手放す前に、大切なこと。ここからの作業こそが、引き算クローゼットを長続きさせるためのポイントです。
「当初は気に入って買ったはずのこれらの服が、なぜ“×ランク”になったかを明確にします。その理由を解明することで、失敗の繰り返しを防げます」
セールでお買い得だった、たまには冒険してみたかった、あまりに安くて買わなきゃ損に思えた……。
向き合うと、自分の性格の弱点もよく見えてきて胸が痛むけれど、この痛みを受け止めることが、次からのむだ買いのストッパーになってくれるはずです。
好きだからって、グレーのトップス6着もありました……。どうやら私は、素材違い、ちょっとしたデザイン、色違いに興奮し、自己満足的に買ってしまう傾向が強いようです。
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<撮影/山田耕司 取材・文/福山雅美 イラスト/カトウミナエ 構成/鈴木麻子>
金子由紀子(かねこ・ゆきこ)
1965年生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。“シンプルで質の高い暮らし”を軸に幅広い執筆を行っている。All About初代ガイドを務める。著書は『ためない習慣』(改定新版、青春出版社)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです