• 現代も愛されている暦・二十四節気。細かく分かれた季節から多くを感じます。和暦・和文化研究家の高月美樹さんに、季節を感じて五感を刺激する和暦の暮らしについて伺いました。
    (『天然生活』2022年5月号掲載)

    五感を刺激する和暦の暮らし

    「暦は知識ではなく、感じるもの」。和暦(われき)研究家の高月美樹さんは、開口一番、そういいました。

    画像: 江戸~明治にかけての動植物や、暦、天体に関する書物を集め、自身が手掛ける旧暦手帳『和暦日々是好日』の製作に活用している。「日本は昔から暦大国なんです」

    江戸~明治にかけての動植物や、暦、天体に関する書物を集め、自身が手掛ける旧暦手帳『和暦日々是好日』の製作に活用している。「日本は昔から暦大国なんです」

    近年、注目を集める旧暦(高月さんは“和暦”と呼称)。本誌1月号の付録「二十四節気七十二候の暮らしカレンダー」で、親しんでいる方も多いと思います。

    朔つい日たちは新月から始まり、15日は満月。そこから、また月の見えない新月までで1カ月。そんな月の満ち欠けに、太陽の周期を組み合わせたのが旧暦です。

    地球が太陽の周りを一周する1年間を24分割したのが二十四節気で、さらに3つに分けたのが七十二候。いまの時季なら、「桜始開(さくらはじめてひらく)」「雀始巣(すずめはじめてすくう)」など、その季節に起こることを短い言葉で表しています。

    画像: 季節ごとの花鳥風月を記した図鑑のような古い書物。「植物だけでなく、虫や鳥とセットで描かれているのが興味深いです」こうした資料からも、昔の人々がいかに自然を子細に観察してきたかがうかがい知れる

    季節ごとの花鳥風月を記した図鑑のような古い書物。「植物だけでなく、虫や鳥とセットで描かれているのが興味深いです」こうした資料からも、昔の人々がいかに自然を子細に観察してきたかがうかがい知れる

    草花の佇まい、虫や鳥の声などから、きめ細かな時の移ろいを読み取り、表しているのが和暦。自然界のリズムをダイレクトに感じ、直感を磨くためのツールとして、活用していただきたいです」

    春から初夏にかけては、植物や鳥、虫たちが生き生きと活動を始め、自然の表情が豊かになる季節。それらを表現した漢字をたどっているだけで、気持ちが浮き立ってきます。

    画像: 明治期ごろの種袋。「春はやはり、花の種類が多彩です。今も昔も、日本人の心を動かしますね」

    明治期ごろの種袋。「春はやはり、花の種類が多彩です。今も昔も、日本人の心を動かしますね」

    「この時季に、ぜひ楽しんでいただきたいのは『春ごと』。日が定まった行事ではありません。田植えなどの農作業で忙しくなる前に、みんなで山に入って飲食をしたり、野山で摘み草などをしたりして遊ぶことを『春ごと』といいました。現代でも家族や友人を誘って気軽にできるので、ぜひ広めていただきたい言葉です」

    二十四節気~春の終わりから初夏〜

    春の盛り、百花繚乱の季節。虫たちは活発に動き出し、鳥たちは子育てへと入ります。

    立夏に入るころには、木々は葉を茂らせ、みずみずしい生命力に満ちる季節です。

    七十二候とともに季節の移ろいを感じてみて。

    春分 3/21〜4/4
    出会いと別れの季節。いつの時代も節目の候

    画像: 桜と柳。青葉が揺れるさまが美しい青柳は春の季語

    桜と柳。青葉が揺れるさまが美しい青柳は春の季語

    画像: 一面の野原に咲く菜の花は、晩春の代表的な景色

    一面の野原に咲く菜の花は、晩春の代表的な景色

    昼夜の長さがほぼ同じになる、二十四節気では大きな節目。スズメが巣づくりを始める「雀始巣(すずめはじめてすくう)」。

    南から桜開花の便りが届く「桜始開(さくらはじめてひらく)」。大気が不安定になる「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」へ。

    晴明 4/5〜4/19
    若葉の緑がまぶしく万物が生き生きと輝く

    画像: 花びらが重なる八重桜。ソメイヨシノより開花が遅く、長く楽しめる

    花びらが重なる八重桜。ソメイヨシノより開花が遅く、長く楽しめる

    画像: 晩春から初夏まで次々と開花するスミレ

    晩春から初夏まで次々と開花するスミレ

    清らかで明るく、すべてのものが生き生きとしているさまを表す「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」に由来。

    「玄鳥至(つばめきたる)」と入れ替わりで、冬を過ごしたがんが北へ戻るころ「鴻雁北(こうがんかえる)」が。

    「虹始見(にじはじめてあらわる)」で雨後の虹に出合えるころ。

    穀雨 4/20〜5/4
    作物にとって恵みとなる春の雨

    画像: ハナズオウの花。晩春は濃いピンクの花が盛りに

    ハナズオウの花。晩春は濃いピンクの花が盛りに

    画像: 花の王ともいわれ、大きな花を房状に咲かせるしゃくなげ

    花の王ともいわれ、大きな花を房状に咲かせるしゃくなげ

    種まきのころの雨は、農家には恵みの雨。穀物に欠かせない雨がたっぷり降るという意を込めて「穀雨(こくう)」といいます。

    水辺のアシが伸び始める「葭始生(あしはじめてしょうず)」「霜止出苗(しもやみてなえいずる)」、「牡丹華(ぼたんはなさく)」と春も終盤。

    立夏 5/5〜5/20
    太陽の力は増し夏の気配を感じ始める

    画像: 立夏を迎えると、若葉の季節。白い花が次々と咲く。立浪草(たつなみそう)

    立夏を迎えると、若葉の季節。白い花が次々と咲く。立浪草(たつなみそう)

    画像: 卯の花と新緑とのコントラストが美しい

    卯の花と新緑とのコントラストが美しい

    やわらかだった春の日差しは色濃く力強くなり、草木の勢いも増す季節。

    カエルの声が聞こえ出す「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」から、「蚯蚓出(みみずいずる)」「竹笋生(たけのこしょうず)」と、生き物たちの動きはますます活発になっていくころ。



    <撮影/近藤沙菜、高月美樹 取材・文/鈴木麻子>

    画像: 立夏 5/5〜5/20 太陽の力は増し夏の気配を感じ始める

    高月美樹(たかつき・みき)
    和暦、和文化研究家。2003年より月と暮らす旧暦手帳『和暦日々是好日』の製作、発行を手掛ける。『まいにち暦生活』(ナツメ社)など暦に関する本の監修や、講演も行う。手帳はウェブサイトにて販売している。https://www.lunaworks.jp/

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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