(『天然生活』2021年1月号掲載)
“グルーミング”でセロトニンの分泌を誘発
家族団らんの時間をもつ
気持ちが楽しくなるような話題を選んで
家族で食卓を囲みながらおしゃべりしたり、食後にゲームをしたり。こうした行為もグルーミングの一種。脳内でのオキシトシン分泌を促し、セロトニン分泌を誘発します。
「必ずしも会話を交わさなくても大丈夫。温かい雰囲気のなかで顔を合わせて食事をすることや、子どもを抱っこすることも、脳科学的にはグルーミングになります」
ポイントは、心地よくリラックスしていること。深刻な議論やケンカなどはかえってストレスが増えるので、なるべく気分が楽しくなるような話題を選びましょう。
ペットを飼う
ふれあい、話しかけることが心地よさを生み出す
セロトニンを活性化する行為、グルーミングは、本来は動物の毛づくろいのこと。
「よく見られるサルの毛づくろいも、動物の母親が子どもをなめるのも、実はストレスを緩和するグルーミングです」
心地よいスキンシップによりオキシトシンというストレスを緩和する物質が分泌され、これがセロトニン分泌を誘発します。ペットと楽しくふれあうのは効果的。
話しかけるだけでもグルーミング効果はあります。ペットが飼えない場合、休日に動物とふれあえる場所に出かけるのもよいでしょう。
気心の知れた人とおしゃべりをする
「ちょっとお茶でも」のコミュニケーションが効果的
家族以外でも、友人や同僚など、親しい人とのおしゃべりも、私たち人間にとってはグルーミングになります。
「昔からある“仕事帰りにちょっと一杯”という習慣も、実は科学的にみてストレスを減らすのに有効な手段なのです。また女性には『ちょっとお茶しない』などといっておしゃべりを上手に楽しむ人が多いですが、これはセロトニン神経活性化の点からみると、とても有効です」
直接会えないなら電話でもOK。ちょっとした機会を見つけて、適度に会話を楽しむように意識してみましょう。ストレスのかからない話題を選ぶのがコツです。
顔を見たり声を聞くことが大切
グルーミングは、必ずしも直接ふれあう必要はありません。大切なのは相手の顔や表情を見る、もしくは声を聞くこと。
これにより心地よさが生まれます。直接会えない場合は電話やテレビ電話でもOK。メールやSNSなど、ネット上の文字だけでは、セロトニン神経は活性化されません。
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<監修/有田秀穂 取材・文/嶌 陽子 イラスト/松尾ミユキ>
有田秀穂(ありた・ひでほ)
医師・脳生理学者。東邦大学医学部名誉教授。東京大学医学部卒業。長年にわたりセロトニンについて研究してきたこの分野の第一人者。メンタルヘルスケアをマネジメントする「セロトニンDojo」の代表も務める。著書に『医者が教える疲れない人の脳』(三笠書房)、『「脳の疲れ」がとれる生活術』(PHP研究所)など多数。https://serotonin-dojo.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです