(『天然生活』2022年8月号掲載)
台所の道具
毎日使うものだからこそ、きちんと選びたいもの。台所に立つのが楽しくなる、使い勝手のよい道具をご紹介します。
「松野屋」松野きぬ子さん推薦
松野屋
群馬真竹みざる
群馬県で自生する真竹から編んだ「みざる」は、米とぎや野菜洗いなどにぴったり。
「一方の縁が開いているので、水をきったり、鍋にあけたりするときも、サッとできるのが便利で気に入っています。こういうところに、昔ながらの“生活の知恵”を感じますね」
「松野屋」松野きぬ子さん
基本の道具選び、私の基準
店では、自分で使ってみて、本当に人に勧めたいと思うものを扱っています。美術工芸品とは違い、日常の道具は、気軽に普段使いできることが大切。私もそういう視点で、ざるやかご、ほうきといった生活で使ってなじむ道具を選んでいます。
まつの・きぬこ 70年続く卸問屋で、現在は荒物を扱う「暮らしの道具松野屋」の店主を夫とともに務める。夫との共著に『松野家の荒物生活』(小学館)がある。
「キッチンパラダイス」田中 文さん推薦
ターク
クラシックフライパン
職人が鍛造した鉄をたたいてつくる、つなぎ目のない一体型フライパン。
「これまでいろいろなフライパンを使ってきましたが、断然おいしく焼けるのがターク。普通の鉄のフライパンより厚みがあるので、食材に確実に火がとおり、うま味が凝縮します」
松田美智子の自在道具
香味鍋
料理家の松田美智子さんプロデュースの土鍋。洗ってもすぐに火にかけることができ、揚げ物以外の調理すべてに使える。
「保温力が高いので、キッチンで温めれば、テーブルに運んでからも4、5分はグツグツしているほど。遠赤外線で素材のおいしさを引き出してくれる鍋です」
ミソノ刃物
UX10三徳包丁
海外でも有名なプロ仕様のステンレス包丁。鋭い切れ味が持続し、研ぎやすさにも定評がある。
「硬さとやわらかさがちょうどよい包丁。サビにくいステンレスだからお手入れも簡単です。野菜や肉、魚となんでも切りやすく、ほかの包丁に比べて研ぐ頻度がかなり少なくて済みます」
「キッチンパラダイス」田中 文さん
基本の道具選び、私の基準
流行に左右されないものを選ぶことが、大事な基準のひとつ。そのうえで、同じようなものがふたつあったら、値段の高い方を選ぶようにしています。値段が高いものにはそれなりの理由があって、結局は使い勝手がよく長持ちするからです。
たなか・あや 福岡でキッチン道具専門店「キッチンパラダイス」を営むかたわら、キッチンツール研究家として活躍。インスタグラム@kitchenparadise.jp
「ギャラリーfève」オーナー・引田かおりさん推薦
ヨシタ手工業デザイン室
レードル
引田さんがひと目ぼれして手に入れたレードルがこちら。しっかり持てる繊細なカーブのハンドルは、上部が折り返してあり、吊り下げにも便利。
「うちにあるレードルはこれだけ。やりすぎない美しいデザインが、そのまま使いやすさに。3回すくうとお味噌汁一杯分になります」
ギャラリーfève オーナー・引田かおりさん
基本の道具選び、私の基準
道具選びでは「わー、ステキ! 」とか「これ、欲しい! 」という直感を大切にします。そうするとたいてい、つくり手の背景に素敵なストーリーがあったりするもの。つくり手に共感できるものとの出合いこそが、幸せな時間だと感じています。
ひきた・かおり 夫とともに2003年より東京・吉祥寺で「ギャラリー フェブ」とパン屋「ダンディゾン」を営む。著書は『青空 そよかぜ 深呼吸』(大和書房)など。
「jokogumo」店主・小池梨江さん推薦
御箸司 市原平兵衞商店
京風もりつけ箸
丸く細い箸先に、手元部分はかまぼこ型でやわらかいものをはさんだり、へらとしても使ったりできるもりつけ箸。
「友人からプレゼントでいただき、その使い心地のよさにリピート買いしています。私は中を調理用、小を盛りつけに使っていますが、ストレスなく食材がつかめます」
ヨシタ手工業デザイン室
ピーラー
「全体がステンレスなので清潔に使えるうえに丈夫。パーツの取り替えができるのもいいですね」と小池さんが愛用するピーラー。
すーっと薄く皮がむける使い心地と手になじむホールド感がポイント。
「展示会で試しに使って、即購入。とにかく切れ味が抜群で気持ちよく使えます」
「jokogumo」店主・小池梨江さん
基本の道具選び、私の基準
長く使えて、手入れがしやすいこと。それに汎用性があって、後から買い足せる道具をふだんから選ぶようにしています。ものが増えてもごちゃごちゃに見えないように、デザインがシンプルで色の主張が少ない黒や白を選ぶことが多いですね。
こいけ・りえ 東京・神楽坂にある生活道具の店「jokogumo(よこぐも)」を営む。自然素材の台所道具、手仕事や民芸の品も扱う。不定期で手仕事ワークショップも。
「スタジオ木瓜」主宰・日野明子さん推薦
コンテ
まかないボウル
デザイナーの小野里奈さんと新潟・燕のメーカーが、細部にまでこだわり開発。
「ボウルは縁の巻き込みがないので水切れがよく、洗いやすい。口径が狭まっているので泡立てやすく、底が厚いので安定感も抜群。別売りの平皿と丸バットを組み合わせると利便性がより高くなる道具です」
野田琺瑯
ホワイトシリーズ
見た目の美しさと保存性・安全性を兼ね備えたレクタングル。そのまま食卓に出しても映える。
「カレーやスペアリブ、魚の漬け込みなどを保存するのにちょうどいい大きさで、10年ほど使っています。本体と同じ、ホウロウのふたがセットになっているところも気に入ってます」
タジカ
キッチンばさみ
すべてステンレスで、簡単にふたつに分解できるため隅々まできれいに洗える。
「タジカの工場に伺ったことがありますが、職人さんの刃物への経験、技術、愛情に並々ならないものを感じました。切れ味の素晴らしさはさすがです。まな板を汚したくない食材を切るのにも便利ですね」
「スタジオ木瓜」主宰・日野明子さん
基本の道具選び、私の基準
道具選びでは、ポリシーをもってつくられているものを選ぶようにしています。もののよさに納得すれば、値段が高くても買いますね。できるだけ長く使いつづけたいので、素材にはこだわって、デザインや形、収納のしやすさも大切にしています。
ひの・あきこ “ひとり問屋”として各地の工房や工場をめぐり、百貨店・店と作家・産地をつなぐ。著書に『台所道具を一生ものにする手入れ術』(誠文堂新光社)など。
<撮影/林 紘輝 取材・文/工藤千秋 スタイリング/大谷優依>
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです