(『天然生活』2022年8月号掲載)
松場登美さんの「むだを出さずに、楽しむ暮らし」
古い模様ガラスを集めて新しい窓をつくる
古民家に残されていたレトロなガラスを自分の手で生かしたくて、松場さんが新たに始めたのがステンドグラス。
板ガラスの周りに銅のテープを巻き、ハンダゴテを当ててつなぎ合わせます。ときにはダイニングテーブルが作業台に。
「自宅の階段を上ったところの小さな窓は、自分でつくりました。つなぎ目がでこぼこしていて、まだまだつたないけれど、手を動かすのはやっぱり楽しいです」
壊れた鍋の取っ手は大きな枝で代用して修理
雪平鍋の柄にするのは、木の枝。日々使ううち取っ手が壊れてしまったため、ちょうどいい太さの枝に付け替えたそう。
「使い勝手のいい道具は毎日よく使う。使いやすいから愛用していたのに、壊れたからといってあっさり捨ててしまうのは忍びなくて。修理しながら、往生するまで使いきりたい」
器も欠けたら金継ぎを施して、佇まいも美しくなってこれまで以上に愛着のわくものに。
本来の用途に縛られず、古い水筒に花を活ける
庭の花を摘んで活けるのも、松場さんの日常の楽しみ。使い道に縛られず、古い道具を花器に見立てて使います。
この日は、ドクダミの花を古い水筒に。素朴さがぴったり合ってとても愛らしい。
使い方に縛られず、いきいきと活けて、季節の喜びを分かち合う。
「壊れた乳母車に竹かごを載せてたくさんの花を活け込んだり、食べるには大きくなりすぎたたけのこをそのまま飾ったりも」
むだを出さないアイデア
手元にあるものを知恵と工夫で生かし、最後まで使いきるのが、松場さんの信条。はぎれも、チラシも、暮らしのなかで役立ちます。
はぎれを貼って巻いてざるやかごを補強する
日常の道具は使い込むうちに壊れることもしばしば。松場さんは修理を楽しみに代えて、自分好みにアレンジして直します。
「竹ざるやかごは使ううちに、端っこがほどけたり、穴があいたりするので、お気に入りの布で補強します」
巻いたり、貼ったりするだけで十分。見た目にもアクセントになって素敵です。
「そうして使いきれば、いずれ捨てることになっても気持ちよく手放せます」
読み終えた新聞チラシで鍋敷き
読み終えればごみになってしまうチラシ広告を使って鍋敷きをつくります。
4cm幅に切って四つ折りにし、4本を組み合わせて折ってはつぎ足し、好みの大きさになったら、丸くして始めと終わりをボンドで留めます。
厚みがあるのでしっかりと丈夫で長持ちします。思いがけずカラフルになるのもでき上がったときの楽しみです。
「もともとスタッフのおばあさんに教わったもの。身近にあるものを生かす、暮らしの知恵ですね」
<撮影/渡邉英守 取材・文/宮下亜紀>
松場登美(まつば・とみ)
石見銀山生活文化研究所所長。夫と立ち上げた「群言堂」にてデザイナー、古民家を再生した宿「他郷阿部家」の女将も務める。6月10日公開のNHKワールドJapanオンデマンド番組「Zero Waste Life」に出演。『あるものを生かしきる毎日を楽しむ捨てない暮らし』(家の光協会)など著書多数。https://www.gungendo.co.jp/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです