Q: 注目されている「腸活」。何から始めればよいですか?
正しい「腸活」を知りたいです!
健康や美容などあらゆることに「腸活」がいいと聞きましたが本当ですか?
具体的になにをすれば腸活によいでしょうか。腸活には発酵食品を食べるといいと聞きましたが、先生のおすすめは何ですか?
(トッコ さん/50代・会社員)
A:腸活は健康にも美容にも◎ 食べものから善玉菌を摂ることを意識して
体は「1本のチューブ」。腸内はあらゆる場所につながっています
腸活とは?
今回はトッコさんからの「腸活」についてのご相談です。腸活が健康や美容などいろいろなことにメリットがあるというのは本当です。
とくに漢方では、すごく簡単にイメージすると人間の体は1本のチューブのようなもので、チューブの外側が皮膚、中側が消化管でぐるっとつながって一周しています。
そのため、おなかの調子がよくなるとお肌の調子もよくなると考えます。
便秘をするとニキビなどの吹き出物が悪化するという経験をしたことがある人も多いと思いますが、老廃物が便秘をして便から出ていかないと、それはふたたび腸管から吸収されてお肌から出そうとするため、吹き出物が悪化するという考え方です。
またお肌の問題だけでなく、腸の環境は便秘や下痢、あるいは便秘や下痢を繰り返す過敏性腸症候群などのおなかの病気や、痩せやすい、太りやすい、糖尿病などの生活習慣病、癌の発生、あるいは脳にも影響し、うつ病などの精神的な影響もあるということが最近ではわかってきています。
「善玉菌」を食べものから摂ることを意識しましょう
その原因に大きな役目を果たしているのが、私たちの腸の中にいる腸内細菌です。
大腸の長さは1.5mから2mで、その中には1000種類、100兆個の細菌が生息しています。
大きく分けると善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分類され、その構成比は善玉菌が2割、悪玉菌が1割、日和見菌が7割となっています。
私たちが健康なときは善玉菌の働きが活発で、その善玉菌が悪玉菌の増殖を防いだり、日和見菌を大人しくさせています。
それが、体調を崩したり、ストレスや食事、薬の影響で、おなかの中の環境が悪くなると悪玉菌が増え、それとともに大人しくしていた日和見菌も悪玉菌と同じように悪さをしてきます。
そのため、善玉菌を食べものから摂るという方法、これをプロバイオティクスといいます。ヨーグルトや納豆、麹などを摂取する方法です。
これらの発酵食品には乳酸菌やビフィズス菌などのいろいろな善玉菌が含まれていますが、その人によっても必要な菌が違うため、いろいろな種類のヨーグルトや納豆、お味噌などを継続的に摂ることが必要です。
またせっかくとった菌も胃酸で死んでしまい、腸内には定着しないこともあり、すでに腸内にいる善玉菌のエサとなる成分を摂取するという方法があり、これをプレバイオティクスといいます。
善玉菌のエサとなるものには野菜類や果物、海藻や豆類、穀物などに含まれるオリゴ糖や食物繊維を摂ることも大切です。
昔ながらの日本食は、善玉菌を取り入れるのにおすすめ
古来、日本人は発酵食品を多く摂取し、穀物や野菜中心の食事を続けてきましたが、最近では肉や脂を含む食事が多くなり、発酵食品や食物繊維の摂取が不足するようになってきています。
私のおすすめは、昔ながらの和食、根菜類の煮炊き物や、納豆などの豆類、味噌などの発酵食品、わかめなどの海藻類。これらを旬の季節に、バランスよく摂ることをおすすめします。
また規則正しい生活や睡眠、適度な運動も心がけてくださいね。
おすすめの漢方
おなかの調子をよくする漢方では、緊張や疲労からくる腹痛を改善する小建中湯(しょうけんちゅうとう)や、おなかの冷えからくる痛みや張り(膨満感)を改善する大建中湯(だいけんちゅうとう)などが広く知られています。
これらの漢方の名前の中に「中」という字が含まれていますが、おなかのことを指します。つまり“おなかを立て直す”という意味の方剤なのです。
このほかにも漢方薬の多くがおなかの腸内細菌に作用して、よい効果を表すことが最近ではわかってきています。
今回の記事が腸活で悩むトッコさんや皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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