(『天然生活』2023年10月号掲載)
「不眠」につながる電子機器
なかなか寝つけない、途中で起きてしまう、寝た気がしない……。そんな眠りの悩みを抱える人が増えています。睡眠専門医の白濱龍太郎先生は「スマホの普及が原因のひとつ」と話します。
「処理しきれない情報が寝る直前まで脳に入ってきて入眠障害や中途覚醒などの不眠につながるのです。スマホなどの電子機器は少なくとも寝る1時間前には『終了』しましょう」
睡眠の主な目的は脳と体の疲労回復です。ぐっすり眠って朝スッキリ目覚めたら、脳と体の疲れがとれているサイン。ではぐっすり眠るとは、どんな状態でしょうか。
睡眠の質を上げるために
「私たちの睡眠は、浅いレム睡眠と深いノンレム睡眠をひと晩で4~6回繰り返しています。レム睡眠では、脳は休息せずに情報の整理を行う一方、ノンレム睡眠は脳も体も休息した状態。ノンレム睡眠のなかで最も深い睡眠を深睡眠と呼びます。睡眠の質は、レム睡眠とノンレム睡眠の切り替えがスムーズで、深睡眠をとれているかどうかで決まります」
レム睡眠は明け方に出やすく、深睡眠は眠りについてから4時間以内に集中して現れるそう。
「最初の深睡眠は入眠して30分後くらいに出現します。その後、2~4時間の間に深睡眠が1~2回現れるのが理想です。長時間眠っても深睡眠がとれていなければ、起床したときに疲れやだるさが残り、ぐっすり眠ったとはいえません」
睡眠のリズムを整え、深睡眠を得るカギとなるのが、自律神経と深部体温です。寝る前の過ごし方を工夫し、ストレッチを取り入れて呼吸を深めることで両方を整えることが可能といいます。
「体に負担の少ない運動なので、できるだけ毎日継続してほしいです。習慣化すると、ストレッチのあとによく眠れるという脳の回路ができ、安眠につながりやすくなります。それでも睡眠に改善が見られないときは、眠りを妨げる病気が潜んでいる可能性があります。一度、病院を受診すると安心です」
安眠までの3つのステップ
Step_1 深部体温を上げる
Step_2 リラックスする
Step_3 深部体温を下げる
寝る前のストレッチのポイント
⚫︎ 毎日やる
⚫︎ 長くやりすぎない
⚫︎ 呼吸しながら行う
安眠できる室温と湿度
ぐっすり眠るためには寝室の環境も重要です。夏は室温27℃、冬は18℃くらい、湿度は季節を問わず50~60%がベストと、白濱先生。
「とくに蒸し暑い夏場は室内でも熱中症のリスクがあります。睡眠環境と命を優先して、エアコンの使用をためらわないように」
エアコンを使う際に気をつけたいのが寝るときの服装。タンクトップや半ズボンだと腕や脚が冷えて睡眠の質が下がることも。
「人は就寝中に発汗しながら体温を調節します。吸湿性の点でも、上は長袖か七分袖、下は長ズボンのパジャマが理想です。また掛け布団の圧力により睡眠の質が上がるという研究結果も。室温と湿度を調整したうえで、寝衣と寝具にも気を配ってみてください」
<監修/白濱龍太郎 取材・文/熊坂麻美 イラスト/イオクサツキ>
白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)
2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立し、約2万人の睡眠の悩みに向き合ってきた。企業での講演活動のほか、東京オリンピックでは選手のサポートも担当。テレビや雑誌などのメディアにも数多く出演し、睡眠の大切さを伝えている。著書に『ぐっすり眠る習慣』(アスコム)などがある。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです