(『天然生活』2023年8月号掲載)
話し合って進めればなるようになる
新居は、1階が上田さんの基地であるキッチンスタジオ。2階がリビング、キッチン、水まわり、寝室の共同スペース。3階が夫の基地である書斎です。朝食を食べたら、それぞれの基地で気ままに過ごす。
夕食まで顔を合わせることはほとんどありません。いまの自分たちにとことん合わせた住まいのおかげで、日々、とても楽しくて快適だと笑います。
「住み替えはあくまでもわが家の例。住み替えなくともいまの家をリフォームしたり、子ども部屋を活用して居場所を確保したりするだけでもいいと思います。夫婦の数だけかたちがあるはずですから」
今後の暮らしについて、真剣に考え始めてから約3年。改めて振り返ると、最初は不安だったけれど、実際はなんてことなかった、というのが本音です。
「住み替えという大きな決断はしましたが、お互いを尊重しながら話し合った結果です。コミュニケーションがとれさえすれば、なんとかなるんだなと、実感しています。私たちの世代の女性は専業主婦が多く、暮らしの軸が子どもや夫にあった人も多いと思います。でも、再び始まるふたり暮らしに向き合えば、軸を自分に戻すことができるはず。恐れず、楽しんでもらいたいなと思います」
夫婦のちょうどいい関係
夕食づくりの間の“5分アペロ”
夕食前に飲みながらつまみ、おしゃべりを楽しむアペロが新習慣に。上田さんが調理中、夫はキッチンの前で上田さんにお酒を注いで自分も飲み、料理ができたら食卓へ運びます。
「私が調理しているのに、夫が飲みながらテレビを見ていたらイラッとします。でも、お酒を注いだり運んでくれたりすると、対等な気持ちになるんです」
朝食づくりは夫に託す
お互い基地で過ごす時間が長いこともあり、朝ごはんと夜ごはんは一緒に食べています。朝食づくりは夫の担当。
「新居でキッチンに入りやすくなったのか、自ら進んで担当してくれました。夫のやる気をそがないために、気になることがあっても余計な口出しはせず、すべてを任せ、ときどきほめるよう心がけています」
自分で自分のトリセツをつくる
話し合う機会が増えるうちに、夫のことをあまり理解していない、と気づいた上田さん。そんなときにおすすめなのが、自分のトリセツをつくること。
「されて嫌なこと、うれしいこと、ブレたくないキャラクターを書いて渡すんです。相手のことで知らなかったらカチンとくることも、事前に申告されていれば穏やかでいられますよ」
<撮影/山田耕司>
上田淳子(うえだ・じゅんこ)
料理研究家。調理師専門学校の西洋料理研究職員を経て渡欧。ヨーロッパや日本のレストランで修業後、独立。自宅で料理教室を主宰するほか、雑誌やテレビ、広告などで活躍。近著に『今さら、再びの夫婦二人暮らし』(オレンジページ)、『フランスの台所から学ぶ 大人のミニマルレシピ』(世界文化社)。インスタグラム@ju.cook
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです