脳を鍛えるなら脳トレより家事
脳トレや脳活のために、数独やパズルなどをせっせとやったり、難しい本を読んだりしているという人は多いかもしれません。
確かに数独を毎日やっていれば数独の能力は上がります。パズルをやるのを習慣にしていれば、パズルの腕も上がります。難しい本をたくさん読んでいれば、もっと難しい本が読めるようになるかもしれません。
ただし、腕の筋トレをどれだけ頑張っても足腰が鍛えられないのと同じように、特定のことばかりやっていると、脳の特定の場所を鍛えることしかできません。
脳のパフォーマンスを維持するには、脳をいろんなかたちで使うようにすることが大事です。
そういう意味では、脳トレ本などでピンポイントに鍛えようとするより、さまざまなタスクの組み合わせである仕事や家事を通じて、脳を全体的に鍛えることのほうが効果的です。
車の運転も脳を鍛えることにつながるので、年齢だけを理由に免許を返納するのはもったいないことだと私は思います。
多くの薬を服用している場合はやはり注意が必要ですが、それでも運転を完全にやめてしまうより、薬を見直したり、安全装置などを盛り込んで事故を起こしにくい車に買い替えるなどして、運転の機会を維持するほうが心身共に元気でいられるでしょう。
アウトプット主体で脳を若返らせよう
もう一つお勧めしたいのは、アウトプット主体の脳の使い方を心がけることです。
たくさんの本を読んだり、新聞を読んだり、映画や舞台を見るといったインプットも脳の刺激にはなるのですが、もっと脳が活性化するのは、そうやって得た情報を自分なりにアレンジしながらアウトプットすることです。
今や誰もが発信者になれる時代なのですから、思い切ってブログやYouTubeチャンネルなどを立ち上げて、不特定多数の人に向けてアウトプットしてみるのもいいと思います。
料理が得意ならそれを紹介するとか、ファッションが好きならそれについて語ってみるとか、編み物が得意なら何か技を披露するとかテーマはそれこそ無限にあります。XやInstagramなどのSNSを活用するのもいいでしょう。
個人に向けるにせよ、不特定多数に向けるにせよ、相手から何かしらのレスポンスがあるのもアウトプットのいいところです。それに対して、こちらもレスポンスを返す、また相手からレスポンスがある、ということを繰り返すこともできますが、こういうコミュニケーションも脳にはとてもいいのです。
自分から話すより聞くほうが好き、あるいは静かに本を読むのが好きというインプットタイプだったという方も多いかもしれませんが、60歳を機に、アウトプット主体の脳への転換にぜひチャレンジしてください。
そうすることで、第2の人生が圧倒的に楽しくなるはずです。
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シリーズ累計13万部突破!もうガマンしない!「見た目」「介護」「夫」「うつ」「お金」の不安がぜ~んぶ吹き飛ぶ!
35年以上にわたり高齢者の精神科医として活躍してきた著者・和田秀樹さんが、60代からの新しい生き方を提案する一冊。60代を迎え、医者の言いなりにならず「やりたい放題」に生きることが、若々しさと健康を保つ秘訣だと説きます。しかし、現実には家事や介護などに縛られ、思うように生きられない女性たちが多くいることに気づくのです。本書では60代女性の「やりたい放題」への一歩を後押しする具体的なアドバイスや、心身の健康に対する助言が盛り込まれています。さあ、本当に自分らしい「やりたい放題」の人生への第一歩を踏み出しましょう。
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹 こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。ベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『60歳からはやりたい放題』『90歳の幸福論』『60歳からはやりたい放題[実践編]』『医者という病』(扶桑社)など著書多数。