Q: しょっちゅう胃が痛くなります。胃にやさしい生活習慣を教えてください
胃にポリープができてしまい、不安です……
胃の痛みに悩まされています。食事のあと、そこまで食べすぎたわけでもないのに、しょっちゅう胃が痛くなり座っていられなくなることがあります。
先日胃カメラでポリープも発見されてしまったので、胃にやさしい生活を心がけたいです。
コーヒーはやはり飲まないほうがいいでしょうか? 胃の不調を改善する食事や習慣などを教えてください。
(てつこ さん/50代・会社員)
A:胃の不調の原因はストレスが関係大。刺激の強い食べものや冷たい飲みものを避けて
それは"機能性ディスペプシア"という病態かもしれません
「機能性ディスペプシア」とは?
今週はてつこさんからのご質問です。胃の痛みに悩まされているのですね。
胃の痛みの原因にはストレスなどで胃酸が出すぎることで胃粘膜が傷つく場合や、刺激の強い食べものを食べたとき、刺激の少ない食事でも食べすぎてしまったとき、ピロリ菌の感染によるもの、鎮痛薬の使用過多、胃潰瘍・胃癌などの怖い病気のこともありますが、てつこさんの場合には胃カメラを受けてポリープ以外は異常がないようですね。ほとんどのポリープは良性のため、すぐに治療の必要はありません。
最近ではこのような病態を「機能性ディスペプシア」といって、胃カメラなどを含む胃の検査をしても、形態学的(胃カメラなどの見た目)には原因が見当たらないのに、胃の痛みや胃もたれなどの不調を繰り返し感じてしまうという疾患があります。
これらは胃に“形態学的には異常がない”けれど、"機能的には異常がある状態"として「機能性ディスペプシア」とよんでいます。
機能性ディスペプシアの原因はまだはっきりとは分かっていない部分もあるのですが、胃の運動異常や知覚過敏、胃酸分泌、ストレスも原因だと考えられています。
ストレスをためずに、お腹の調子に寄り添う生活を
胃の不調を改善する食事や習慣として、過度なストレスをためない、睡眠を規則正しくすることが大事です。
食事の時間を時間で決めるのではなく、お腹がすいたら食事をとるようにするとよい場合もありますね。
そして、夜に食事をしてすぐに寝るのは避けましょう。2時間くらいは寝るまでに時間をあけるとよいと思います。
油ものや甘いもの、辛いもの、冷たいものを避けて
食事内容は胃酸の分泌を促す油っこいものや甘いもの、直接胃粘膜を刺激する刺激の強い香辛料は控えることも大切です。
コーヒーに含まれるカフェインも胃酸分泌を促します。そのため、デカフェ(95%以上のカフェインが取り除かれている)やカフェインレス(カフェインをほとんど含まない)のコーヒーならあまり心配いらないかもしれませんね。
普通のコーヒーでもあまり濃くないものでミルクで割ったものを適量ならば問題ないかもしれませんが、もともと暑い国の飲みものなので、体を冷やす作用があるため、寒い冬には量を控えたほうがよいでしょう。
体を冷やすという点では、生野菜や果物、冷たい飲みものなども避けましょう。
最近では冷房の完備や冷蔵、冷凍の技術の進歩で、生のサラダや、南国のトロピカルフルーツや甘いデザートが一年中手に入るため、お腹が冷えている人が多いです。ご自分でも胃のところを触って冷えているようなら、お風呂でゆっくり温まったり、お腹が冷えない服装を心がけるのがよいと思います。
できるだけ、温かい飲みものや、旬の食べものを火を通して摂るようにして、さらにゆっくりよく噛んで、腹八分目を心がけてみてください。
また適度な運動は胃腸の動きがよくなりますので、30分くらいのウォーキングなどもおすすめです。
胃の不調におすすめの漢方
漢方では、胃もたれには平胃散(へいいさん)、胃の痛みには安中散(あんちゅうさん)、食欲不振には六君子湯(りっくんしとう)などもおすすめです。
西洋薬の胃薬では、胃酸の分泌を抑えるもの、胃粘膜を保護するもの、胃の動きを促進するもの、胃の痛みを止めるものなどがあります。
漢方薬も同じく、胃酸を中和する生薬が入ったもの、胃の動きをよくする生薬が入ったもの、胃の痛みを止める生薬が入ったものがあるのですが、漢方薬の面白くて理にかなっているところは多くの胃薬にストレスを和らげる生薬が入っているところなのです。
昔の人はストレスが溜まると胃が痛くなるということを知っていたので、胃薬に根本の原因となるストレスを和らげる生薬を配合していたのですね。昔の人の知恵は本当に素晴らしいと思います。
今回の記事がてつこさんはじめ、皆様のお役に立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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