(別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.39掲載)
お昼ごはんはつくらず、おいしいものをつくる人から購入
暮らしのなかで、広川さんが大切にしているのが「食べる」ことです。ゆるやかなヴィーガンの暮らしをしているそう。
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キッチンはオープンに。どっしりとしたカウンターは、東京のショップで使っていたものを京都まで運んできた。はっと目をひく電球のペンダントライトは照明の専門ブランド「フレイム」のもの。「換気扇が目立つので、ちょっと高価だったけれど、がんばってイタリア製のものを選びました」
「近所に自然食や減農薬のスーパーやカフェがいっぱい。お弁当屋さんも充実しているから、お昼ごはんは買ってくることが多いかな」
自分でつくることにこだわらず、おいしいものをつくる人がいれば、彼ら、彼女らとの出会いを生かす。そんな合理性もマチ子さんらしさです。
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昼食には、お気に入りの店で調達したヴィーガン仕様のお弁当を。この日は、三条京阪駅近くの「喫茶ホーボー堂」(インスタグラム@ hobodocafe)で。玄米ごはんに、野菜を中心にしたおかずがこまごまと入って食べごたえがある
いまは、街を歩くたびに、ひっそりと自分の好きなことを仕事にしている人たちと出会うのが、楽しみなのだとか。
「『間借り喫茶』といって、本業は別にあるのだけれど、好きだからと、スペースを借りておいしいものをつくって販売している人たちがいるんです。『好き』のパワーってすごいって、感じるたびにワクワクするの」
大切なのは、その日、その時、大好きなことを諦めないということ
住み慣れた東京を離れて京都でのひとり暮らしは、さびしくないですか?と聞いてみると……。
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京都に移住してから知り合った友達は、ヴィンテージビーズの店を営む方。「友達はたくさんいなくていいんです。本当に気が合った人が5人もいれば十分」とマチ子さん
「全然。ひとりで本を読んで、寝て、散歩して、ごはんを食べて。それがこの家で完結できるんです。私ね、四畳半の方丈で暮らすという『方丈記』の世界が理想なの」と語り、「いまが一番幸せ」というマチ子さん。
それは昔からずっと「いまここにある好きなこと」に向き合ってきたからだと教えられました。
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本を読むことも大好き。
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30年以上前に、アメリカから買ってきた編み棒のセット。「これじゃなきゃ編みたくないぐらいのお気に入りなの」
〈撮影/石川奈都子 構成・文/一田憲子〉
本記事は別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.39からの抜粋です
一冊を通してのテーマは、「大事なことをひとつだけ決める」。
家事を全部がんばると、長続きしなかったり、途中で疲れてしまったり。 そんなときは、これだけは譲れない、という一番大事なことをひとつだけ見つけてみるのはいかがでしょう?
ただし、「ひとつだけ」というところが難しい! 「ひとつ」をチョイスするということは、ほかを諦めるということです。 捨て去る勇気を持ったとき、 どうしても手放せない確かなものがきらりと輝きはじめます。
本書では、紆余曲折しながら、暮らしのなかの大事なことをひとつだけ決めた12人を取材。 その結果手に入れた、無理せずラクに暮らしを回していくための収納と段取りの仕組みづくりを紹介しています。
広川マチ子(ひろかわ・まちこ)
美術大学を卒業後、百貨店での商品企画のアドバイザーを経て渡米。アンティークの買い付けを行う。帰国後、東京・吉祥寺にヴィンテージの生地や雑貨の店「Socks* ciao!」をオープン。洋服のセミオーダーの店「A-materials」や、アートを展示する「A-things」と形態を変えたあと、実店舗はクローズ。2年前に京都に移住。
※ 記事中の情報は取材時のものです