• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫のいる家の虫事情について。

    なぜか虫が出ない我が家。もしかして退治しているのは……?!

    我が家は、もう築20年になる「新しくはない家」です。

    ですが不思議なことに、引っ越してきてからずっと虫が出たことがないのです。クモやゴキブリといった一軒家なら一度はお目にかかる虫と遭遇したことがない……。最初の頃は、まだ新しいからかな? と思っていたのですが、実は最近、びっくりする現場を目撃しました。

    前日夜にいきなり現れたシャインマスカットほどの胴体の大きなクモ。「こわい!」と思いながらも殺すことはためらわれ、「壁の上にいるから……」と放置して眠りました。夢の中で、猫たちがはしゃぐ音が聞こえます。深い眠りに落ち、朝、リビングに行くと……見覚えのない節のある黒い足のようなものが床に散らばっていました。

    まさか、と思い、我が家で一番やんちゃな「サチ」の口元を見ます。

    ありました。おそらくクモと思われる虫の足。どうやらクモの胴体を丸ごと食べてしまったようです。

    しかもよほどおいしかったのか、クモがいた壁の上を、その日からずっと見上げて「ニャーニャー」鳴いて待つようになりました。

    私は、虫も大切な命だと思っています。だから、正直、サチがクモを殺してしまったのはショックでした。

    でも、さらにショックなできごとが。その翌日には、まだ子どものゴキブリをサチが追いかけて、やはり食べていたのです。

    なるほど、と合点がいきました。

    これまでも、虫が出なかったのではなく、ずっと猫たちが食べていたのだ、と。

    画像: なぜか虫が出ない我が家。もしかして退治しているのは……?!

    猫の狩猟本能が発揮されて

    よくよくネットでも調べてみると、うちだけでなく「今まではゴキブリをよく見ていたけれど、猫を飼い始めてからピタッといなくなった」という方が意外といるようなのです。

    そもそも猫は狩猟本能のある動物。野生の子は小動物や昆虫を食べているので、家で暮らしている子も、カサカサと動き回るものには本能で飛びついてしまうのだとか。そして、そのまま口に入れる子も少なくないそうです。

    とはいえ、特にゴキブリというと不衛生な印象もある虫。食べてしまって大丈夫なのか、とても不安になりました。

    結論から言うと、大部分のケースでは大きな問題はないそうです。ただごくまれに病気や寄生虫に感染する恐れがあるので、次のような症状が出た場合は動物病院に行ったほうが安心です。

    ・食欲がない

    ・頻繁に吐く

    ・肛門付近をかゆそうにしている

    猫に害になることもある駆除剤にもご注意を

    また、気をつけたいのがゴキブリなどの駆除のために使う駆除剤。

    時間差で効果が現れる駆除剤を設置していると、それを食べた虫を体内に入れることで中毒症状を引き起こしてしまうそうです。冷却スプレーや熱湯など(いずれにしても使うのは申し訳ないですが)、猫の害にならないものを選び、毒餌などは避けた方が安心です。

    猫と虫の共存はなかなか難しいですが、どちらも同じかけがえのない命。

    なるべくなら、虫は外に。猫は虫がいても気にならないよう、日ごろからたっぷり遊んであげるといいかもしれませんね。

    画像1: 猫に害になることもある駆除剤にもご注意を

    画像2: 猫に害になることもある駆除剤にもご注意を

    咲セリ(さき・せり)

    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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