• 味覚はときに切ないほど、懐かしい記憶を呼び覚まします。口にすればいまでも、幼い日に戻れるような気がするのです。今回は、料理研究家のきじまりゅうたさんに、祖母の村上昭子さんの思い出がいっぱいの夏の味「鍋しぎ」のつくり方を教わりました。
    (『天然生活』2023年9月号掲載)

    幼いころの思い出の味は、いまの僕をつくった味

    子どものころは毎日のように祖母や母の料理撮影で、人の出入りが絶えなかったというきじま家。

    平日の夕飯は仕事の料理の延長だったと話すきじまさん。スタッフの方を手伝って、まかない的に食べることも多かったそうです。

    「家庭用には何か一品、祖母や母が旬の料理をつくってくれていました。祖母は和食、母は洋食担当」

    興味深いのが、週末の定番だったというカレー。平日の撮影で少しずつ余ったさまざまな部位を活用したもので、牛豚鶏ひき肉ミックスのユニーク贅沢版だったとか。

    「土日は父も料理を。焼きそばは僕の好物で、普通なんですけれど、強火でパラッと炒めていて。黒こしょうとはちみつを垂らしたハムチーズトーストは、いまは僕の味」

    尽きない思い出話から今回伺った鍋しぎ。このためだけに油を使うのはもったいないと残った素材も一緒に揚げていたそうで、南蛮漬けもよく一緒に食卓に並んだとか。

    きじま家の「鍋しぎ」のつくり方

    画像: きじま家の「鍋しぎ」のつくり方

    素揚げにしたなすとピーマンを、豚肉と一緒に甘辛味の味噌炒めに。冷めてもしっとりおいしく、白いごはんが進みます。そう麺とあえても。

    大鉢に盛って味わう、ごはんが進む一品

    祖母の村上昭子さんの思い出がいっぱいの味。たっぷりと油を吸ったなすが口の中でとろけます。村上さんは晩年、さっぱりした味を好んだことから、なすをレンジで蒸してから炒めていたそう。年月を経て方法を変えてなおつくりつづけ、家族に愛されてきた味。

    材料(4人分)

    ● なす4本
    ● ピーマン4個
    ● 豚ロース薄切り肉200g
    A
    ・味噌大さじ4
    ・砂糖大さじ2
    ・みりん大さじ2
    ・しょうゆ大さじ1
    ・水1/2カップ
    ● 揚げ油適量

    つくり方

     Aは混ぜておく。ピーマンはへたを切り落として種をのぞき、1cm幅の輪切りに、なすもへたを切り落として1cm幅に切る。豚肉は5cm幅に切る。

     揚げ油を中温に熱し、なすをしんなりするまで2~3分ほど揚げる。ピーマンはサッと油通しして引き上げ、ともに油をきる。

     フライパンに油大さじ1/2(分量外)を入れて火にかけ、豚肉を広げて軽く炒める。肉の色が変わったらAを加えて煮立て、を加えて汁けが少なくなるまで煮からめる。



    <料理/きじまりゅうた 撮影/山川修一 取材・文/田佳代>

    画像: つくり方

    きじま・りゅうた
    3代続く料理研究家の家庭に育つ。基本を踏まえたつくりやすい料理にファンが多い。雑誌やテレビ、ラジオなどのほかYouTuberとしても活躍。公式YouTubeチャンネル『きじまごはん』では、いつもの料理が楽しくなる動画や、ちょっとしたコツをていねいに紹介している。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



    This article is a sponsored article by
    ''.