つくることの魅力を多くの人へ
私は現在いくつかのソーイング教室で大人服や布小物のつくり方を教えています。
6年前はじめて教室開催のお話をいただいたときは、本づくりのときのように「私にちゃんと務まるのだろうか」と不安でいっぱいになったものです。
一人考えあぐねて夫と子どもに相談してみると「へー、いいんじゃない?(夫、娘)」「喜んでもらえてお金がもらえるってすごいねえ!(息子)」なんてサラッと言われ、拍子抜けしました。
確かにくよくよ悩んでいても仕方ない。「一度やってみて、もし向いていなかったらお断りしよう!」と気持ちを切り替えてチャレンジしてみることに。
最初は出版社からの紹介で一か所だけだった教室が、さらに別の場所からもお声を掛けていただいて、ぽつり、ぽつりと増えていきました。
教室でお教えしていて何よりうれしいのは、自分で自分の服をつくるようになった皆さんが「自分でつくるようになって、ものを大切にするようになった」とおっしゃること。
かつての私と同じく「クローゼットがスカスカになって気持ちいい!」という方もいらっしゃいます。
また、「たとえ高価でも本当に吟味したものを気持ちよく買えるようになった」など、つくり手の目線を持てるようになったことで、暮らしや考え方がガラリと変わっていかれる様子も目のあたりにしました。
さらに、皆さん回を重ねるごとに、明るく元気になっていかれて、自信に満ち溢れていくのです。「つくるってすごい!」とつくづく思います。
世の中の常識や正論なんてちょっと脇に置いておいて、まずは自分の手を動かし、五感をフルに働かせてみると、今まで見ていた世界の角度がぐいんと変わる。そんな魅力的な体験をもっと多くの人にしてもらえたら……。
ブランドを立ち上げて16年目の今年、私はつくり手の一線からは離れ、これからは「手づくりをしたいけれど一歩踏み出せないでいる方の、道先案内人をしていこう」と心に決めました。
決めたとたん、まるで引き寄せられるように2024年になってから1か所、さらに下半期に入ってから2か所、教えさせていただく教室が増えました。
先日は、はじめて自宅のアトリエにも生徒さんを迎え、なんと製図から服づくりを学べるカリキュラムも開設したのです。
〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉
美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。
現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。
ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
インスタグラム:@minowa_mayumi
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