Q: どんなに早く寝ても5時間で目が覚めます。どうしたらよいでしょう
負のスパイラルがつらいです……
じゅうぶんな時間、睡眠をとることができません。どんなに早く寝ても5時間経てば目が覚めてしまいます。
たとえば21時~23時頃に寝ると夜中に目が覚めてしまいそこから眠れなくなる。そうするとその日の昼頃に眠気がきてしまう。なので24時~25時頃に寝るしかなくなる……。どうしたらよいのでしょうか(切実です)。
(トコナツ さん/自営業)
A:脳を休ませる環境を整え、寝る時間と起きる時間を安定させましょう
「トリプトファン」が多く含まれる食べものをとって、睡眠の質を改善しましょう
自営業の方は、生活が不規則になりがちなので注意を
今回はトコナツさんからの、5時間くらいで目が覚めてしまうというご相談です。
寝つきは良いのに、途中で目が覚めてしまうことを中途覚醒といいます。途中で目が覚めると、眠りが浅い、ぐっすり寝た気がしない、昼間に眠くなるなどの症状が問題となりますね。
中途覚醒の原因として多いものはストレス、睡眠覚醒リズムの乱れがあり、交代勤務(夜勤などのシフトによって寝る時間がバラバラなど)や不規則なライフスタイルが影響してきます。
トコナツさんは自営業とのことですので、仕事の自由度はあると思いますが、仕事の量が多くて残業が多い、抱えている仕事が多すぎて気が休まらない、納期が迫っていて焦っているなどの場合もあるのではないでしょうか。そういう状態があると眠ってからも緊張状態が続くため、目が覚めやすくなります。
あるいは自営業の方の場合、起床時間や寝る時間を自分でコントロールできるため、寝る時間や起きる時間が不規則になる場合が多いです。
就寝・起床の時間がバラバラだと、睡眠と覚醒を司どる私たちの体内時計が自然の明暗リズムに同調できず乱れてくるため、目が覚めやすくなります。
寝る時間と起きる時間を安定させるための習慣
対策としては、まずは寝る時間と起きる時間を一定にして体内時計を安定させることが大切です。
夕方以降はスマホやテレビを控え、室内の電気も暗くして、できるだけ光刺激を避け、脳を休める準備をしてください。
寝室の騒音をさけ、湿度、温度などを快適にすることも大切です。6月から9月にかけては蒸し暑い日が続きますので、エアコンなどを上手に使うことも大切です。
アルコールは代謝物質のアセトアルデヒドが眠りを浅くするので控えましょう。また水分やカフェインをとりすぎると夜間にトイレに行きたくなったり、脳が覚醒するため取り過ぎに注意しましょう。
朝起きた時はカーテンを開け、日の光を浴びて体内時計をリセットすることも効果的です。
日中の適度な運動で自律神経を整え、体を適度に疲労させるのも睡眠の質を改善することにつながります。
睡眠の質を改善する食べもの
睡眠の質を改善する食べ物としては睡眠や覚醒に作用する神経伝達物質に「セロトニン」があるのですが、この材料になるのが「トリプトファン」というアミノ酸で、豆腐、納豆、味噌などの大豆製品、かつお、まぐろ、牛肉、卵、牛乳などのタンパク質、バナナなどに多く含まれています。
またこのトリプトファンの吸収を良くするのがビタミンB6で、ヒレ肉やささみなどに多く含まれているので、積極的にとるようにしましょう。
脳の興奮を抑え、心身をリラックスさせるGABA(Gamma-Amino Butyric Acid:γ-アミノ酪酸)を取るのも大切です。GABAは漬物やキムチなどの発酵食品、キノコ類、玄米などの雑穀類、トマトなどに多く含まれます。
睡眠の質の改善におすすめの漢方
漢方薬では脳の興奮を抑える抑肝散(よくかんさん)、気分をリラックスさせて睡眠を改善する加味帰脾湯(かみきひとう)、悪夢などの夢見を改善する甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)などもおすすめです。
また途中で目が覚める原因には睡眠時無呼吸症候群の心配も。これはいびきがうるさい人や肥満の人は眠っている時に気道が狭くなり呼吸が止まり、酸素不足になり目が覚める病気です。
寝ている時に足がピクピクと痙攣したり、足がむずむずする周期性四肢運動障害(別名をむずむず脚症候群ともいいます)などのこともあります。
鉄欠乏でこの症状が起こる場合もあります。あるいはうつ病の初期症状のこともあるので、上記の工夫をしてもつらい場合には内科や精神科の先生を受診されるのも安心です。
今回の記事がトコナツさんはじめ、中途覚醒でお悩みの皆様の少しでも参考になれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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