• エッセイストで空間デザイン・ディレクターの広瀬裕子さん。60歳を前に、歳を重ねるなかで出てくるさまざまな課題や考えなくてはいけないこと。たとえば住まいのこと、仕事のこと、⾝体のこと。ひとつひとつにしっかり向き合い、「心地いい」と感じる方へ舵を取る広瀬さんの毎日。そこから、60歳までにこうなりたい、という目標と取り組みを同世代や下の世代の方とシェアしていけたらと思っています。お茶時間の楽しみについて。

    日常の中の句読点

    1日のなかで大切にしている時間があります。そのひとつが「お茶の時間」。朝、午後、夕食後。その時その時、いただきたいもの用意します。多くの場合、紅茶を選びますが、コーヒーも、日本茶も、わたしにとっては大切なもの。時間は常に流れていきますが、その流れを一瞬、止めてくれるのが「お茶の時間」です。「日々のなかの句読点」。ずっとそんな風に思っています。

    お茶とともに欠かせないのがお菓子。病院に行くとお医者様からは「甘いものは、ほどほどに」と言われますが(多分、全員に言っているはず)、アルコールもいただかなくなったし、体型も以前とあまり変わらないこともあり「甘いもの」に関しては、かなり大らかです。

    画像: 「焼きたて」の時間を見計らって買いにいくのは、銀座和光さんの季節のパイ。こちらはマロンパイ

    「焼きたて」の時間を見計らって買いにいくのは、銀座和光さんの季節のパイ。こちらはマロンパイ

    甘いものには大らか、でも「つくる」はやめました

    でも──。お菓子の選び方、いただき方は、以前と変わりました。「すきなもの」を「おいしい状態」で「いただきたい時だけ」にするようになったのです。

    甘いものがすきだからと言っても「お菓子=全てすき」ではありません。それに「食べたいとき」に「いただく」が、何よりおいしい。それを意識してから、すきだからこそ「すきなもの」を「いい状態」で「いただきたい時」に、を大事にするようになりました。

    画像: 焼き菓子とともに日持ちするマカロンは「プラス買い」にぴったり。「ピエール・エルメ」のローズ

    焼き菓子とともに日持ちするマカロンは「プラス買い」にぴったり。「ピエール・エルメ」のローズ

    と共に、自分でのお菓子作りをやめました

    以前は、材料を厳選して、自分で作っている時期もありました。ただ、自分で作ると量が多く(ケーキならホールなど)なります。おいしいうちに、と思うと、食べすぎます。それに、当然ですが、プロが作るほうが完成度も満足度も高いのです。

    そんなことから「お菓子は作らない」と、決め、持っていた製菓道具をすべて手放しました。その時、気づいたのです。わたしは、お菓子づくりに向いていなかったことに。気持ちも、収納も、風通しよくなりました。

    東京で味わう季節のお菓子

    東京は、おいしいお菓子であふれています。新しいお店も次々オープンします。

    そんななか、年々、思うのは、昔からあるお店の大切さ。30代、40代にいただいていたお菓子を、ことの他、好むようになってきました。年齢的なものなのでしょうか。安定のおいしさがいいのです。昔からあるお店は、つづいている理由があります。

    いつものお店に行くことが増えました。でも、店頭には、季節季節のお菓子がならぶので、お菓子は常に変わります。行くたびにこころ躍るお菓子を目にします。

    お店でお菓子を買い求める際、気になることがあるとしたら購入数が少ない点でしょうか。家族で暮らしている方、誰かといただく場合はいいのですが、ひとりで暮らしていると、その日、食べ切れるだけの数を買い求めるため、個数が限られてきます。「ひとつだけ」に、気が引ける場合があるのです。

    画像: 春になるのが待ち遠しい桜餅(関東風)。「とらや」製

    春になるのが待ち遠しい桜餅(関東風)。「とらや」製

    画像: 秋の楽しみは、新栗のモンブラン。「新橋小川軒」のもの

    秋の楽しみは、新栗のモンブラン。「新橋小川軒」のもの

    私の暮らしにあった、お菓子の買い方

    そういう時は、ケーキ+焼き菓子、生菓子+羊羹、などにするようにします。日持ちするものは、翌日か数日の内にいただけばいいので、ちょうどいいのです。

    そんな風にお茶の時間とお菓子を大切にするようになると、なんとなく甘いものを買うことがなくなりました。なかなか行けないお店だったとしても、食べ切れない量を買うこともなくなりました。そう。日々の買い物に関しても、風通しがよくなりました。

    お茶の時間、お菓子の時間をたのしむために「健康でいよう」と、思います。若いころには、なかった感覚です。お菓子と健康。矛盾しているようですが、人生には「たのしみの準備」が必要です。すきなことをつづけるために、少し気をつける、気を配るという準備です。

    60歳のメモ

    1「句読点」のような時間を作ってみる。何が「句読点」になるか考えてみる

    2 お茶の時間を見直してみる

    3 お茶の時間がゆたかになる工夫をする

    4 おいしいものをおいしくいただけるよう健康に気をつける

    5 すきなお菓子、すきなお店を大切にする


    画像: 私の暮らしにあった、お菓子の買い方

    広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
    エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19



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