(『天然生活』2021年11月号掲載)
感染対策には“腸内細菌”を育てる食事を
食卓に並んだのは野菜が中心の素朴なおかず。本間真二郎先生一家がふだんから食べている食事です。
この日のメニューは玄米と味噌汁と漬物の「基本の3点セット」のほか、自宅の畑で採れた野菜や自家製納豆、鶏肉の味噌漬けなど。
旬の野菜を中心とした、発酵食品や食物繊維が豊富な食事をよくかんで食べる。これが本間家の健康を支える基盤のひとつです。
「食にとって大事な原則は“身土不二”と“一物全体”。“身土不二”とは自分の体と住んでいる土地は切り離せないという考え。その土地で採れた旬のものを食べることが健康を支えてくれます。“一物全体”は、食材をできるだけ丸ごと食べるということ。なるべく精製、精白していない食べ物をいただくことで、ビタミンやミネラル、食物繊維を損なうことなく摂ることができるのです」
本間先生の主張は以前から一貫しています。それは「人間も自然の一部。衣食住、心も含めてすべてにおいて自然に沿った生活をしていれば病気にならない」というものです。
その要となるのが腸内細菌。ひとりの人間の中におよそ1000種類以上、100兆個以上の腸内細菌が存在しているといわれ、それが免疫の活性化をはじめ、健康にとって驚くほど多岐にわたる役割を果たしています。
つまり感染対策の根本は、おなかの中で多種多様な腸内細菌をバランスよく育てることなのです。
自然に沿った暮らしの積み重ねが、免疫力を高める
この考えを基盤に、毎日の食事をつくるのは妻の理恵さんです。
「旬の野菜を中心に献立を組み立て、赤、白、黄、緑、黒の5色がなるべく入るようにしたり、ごはんを食事全体の半分くらいの量になるようにしたり。でも、そんなにストイックには考えていません。季節によっては採れる野菜の種類が少ないときもありますが、それも自然なことですから」
本間先生流 日々の食事づくりでの実践
● 野菜を中心に献立を組み立てる
● なるべく5色を意識する(赤、白、緑、黒、茶)
● 玄米(分つき米)を食事全体の半分くらいに
● タンパク質は手のひらくらいの量を目安に
● 栄養について気にしすぎず、旬のもので食事をつくる
食事だけではありません。
本間家では体の不調やけがなどの際にも薬に頼らず、自然のものを使ったお手当てなどで自己治癒力を高めるのが方針。自家製のものを何種類か取りそろえて症状やタイミングに合わせて使っています。
それらを紹介してくれながら、理恵さんがこんな話をしてくれました。
「私自身、以前は貧血やアレルギーなどの体の不調を抱えていましたが、この暮らしを続けていくうちに体調もよくなり、体温も上がりました。何より以前と違うのは、“自分で自分の命の主導権を握っている”という安心感があることです。子どもたちが外でふだんと違うものを食べることもありますが『〜を食べてはいけない』といったことはありません。毎日の生活で基盤ができているから、多少のことは大丈夫と思えるんです」
その言葉は、本間先生が繰り返し口にする「自己軸」という言葉と重なって聞こえます。
「状況によってはある程度の対策も必要ですが、それは病気の原因や対策を外=他者軸に求めることであり、本質ではない。重要なのは自身の免疫力を上げて、病気に対する防御力を高めること、つまり自己軸が中心の生き方なのです」
本間先生流 免疫力を高める暮らし方
● 暮らしの中でよく動き、基礎代謝を高める
● 規則正しい生活で体のリズムを整える
● 適度に日光にあたり、ビタミンDをつくる
● 趣味や創作活動などで、リアルな生活を楽しむ
● 睡眠と休息をとり、自然治癒力を支える
そのために特別なことをする必要はありません。大切なのは、「これは自然に則しているか」と意識しながら暮らしとていねいに向き合う、そんな日々の積み重ねです。
「ウイルスを過度に恐れないためには、日常生活を整えて内なる力を高めることが一番。無理せず、できることを続けていくといいと思います」
本間先生流 免疫力を落とさない工夫
● 添加物、加工食品をできるだけ控える
● 塩素を取り除く浄水器を使う
● 日常のなかで楽しみを見つけ、ストレスをためない
● ミネラルが多い、天日海塩を摂る
● 日用品に含まれる化学物質からの経皮毒を防ぐ
〈撮影/林 紘輝 取材・文/嶌 陽子〉
本間真二郎(ほんま・しんじろう)
医師、医学博士。2001年より3年間、米国のNIH(国立衛生研究所)にてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、大学病院勤務を経て2009年、栃木県那須烏山市に移住。地域医療に従事しながら自然に沿った暮らしを実践。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです