(『天然生活』2021年3月号掲載)
血流をよくして“毒素をため込まない体”に
「なんとなく体が重い」「肩や腰が凝り固まっている気がする」「気づくと気分がふさぎ込みがち」……。
新しい季節の始まりに向け、心と体にたまった毒素を出して、すっきりしたいですね。
東洋医学を取り入れた統合医療の第一人者、小池統合医療クリニック院長・小池弘人先生によると、「わかりやすくいうと、毒素は体に悪い影響を与えるものといえます。毒素には、食品の添加物のように体の外から入ってくるものと、体内の老廃物のように体の内側から出るものがあります」
● 体の「外」から入ってくる毒
体の外から毒素が入ってくる身近な例が「食べ物」。保存料などの添加物や残留農薬が有害化学物質として、体内に蓄積します。水銀や鉛、カドミウム、ヒ素などの有害ミネラルも毒素です。広い意味では、ウイルスや細菌、放射能なども毒素といえます。
● 体の「内側」で発生する毒
常に新陳代謝を繰り返している体内では、さまざまな物質が循環し、いらなくなった老廃物などの毒素を排出しています。生活習慣病の原因ともなる活性酸素やドロドロの血液で血流が滞る「瘀血(おけつ)」も、体内で発生する毒素です。
体に必要な栄養や水分も、それが過剰になるとうまく体内で循環しきれずに、「脂肪」や「むくみ」という毒素となって蓄積してしまうのです。
身近で、だれでもできるデトックスの方法が、血流をよくして、瘀血を改善すること。「東洋医学では、運動で気のめぐりや血流をよくしたり、血液をサラサラにする食事や漢方薬を取り入れたりすることで、毒素を便として排出。瘀血を改善します」
体と心のめぐりをよくする温め方 01
38〜40℃のお風呂につかる
38〜40℃のぬるめのお湯でじっくりと体を温めると、副交感神経が働いて心も体もリラックス。余分な水分や毒素を排出しやすくなります。
血流をよくする炭酸風呂(重曹大さじ10+クエン酸大さじ3 ※市販の入浴剤でも可)、抗酸化作用のある水素入浴剤、発汗作用のある天然塩などを取り入れて、充実したお風呂タイムに。
体と心のめぐりをよくする温め方 02
過度な厚着はしない
冷え対策といっても、着ぶくれするほど厚着をするのは考えもの。着込んで汗をかき、そのままにすれば体を冷やしてしまい逆効果です。
温めたい場所は靴下や腹巻き、毛糸のパンツなどでしっかりケアしつつ、薄手の服を重ね着して上手に体温調整をします。
体と心のめぐりをよくする温め方 03
蒸しタオルをする
ぬらして絞ったタオルを電子レンジ(500〜600W)で1分半加熱してつくる蒸しタオル。肩や首の凝りをほぐしたり、顔の老廃物を取り除いたり。疲れ目にもおすすめです。
加熱後のタオルはやけどに注意しながら一度サッと広げると、ちょうどよい温度に。
体と心のめぐりをよくする温め方 04
ふくらはぎをもむ
血流アップに効果的なふくらはぎのマッサージ。心臓に向かって下から上へもむことで、足先に滞っていた血液が心臓に戻り、全身の血のめぐりが活発に。
老廃物やむくみの原因となる水分も流れるので、毒出し効果が高まります。お風呂でのひまつぶしにもおすすめ。
体と心のめぐりをよくする温め方 05
ボディソープは使わない
手やタオルでやさしく肌をなでるだけで、汚れや老廃物は落ちます。適度に皮脂を残すことで体温を保ってくれる効果も。
石けんを使うと、肌表面をバリアしている善玉菌が流れ、乾燥や肌荒れの原因にも。毎回使わず、気になるときだけ使うくらいに。
体と心のめぐりをよくする温め方 06
湯たんぽは一年中使う
湯たんぽをお尻の下や腰の後ろに置いたり、おなかにかかえたりすると、体の内側からじんわりぽかぽか。
昔ながらのブリキ製は熱伝導率が高くておすすめですが、ほかの素材やペットボトルにお湯を入れて代用しても。冬はもちろん、冷房で冷える夏にも活用して。
「冷え」と女性の体のお話
女性の大敵といえる「冷え」から体を守るには、24時間365日温かい状態を保つことが大切です。とくに血流をよくすることは、冷えを防止することに直結します。
なかでも気をつけたいのが、血流が滞りがちな骨盤付近です。骨盤の周りの血のめぐりが悪いと、そこからおなかや腰が冷えて、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人病の原因になることも。
「おなかはもちろん、お尻や太もものような大きな筋肉がついている部分も冷えやすくなります。下半身を温めて、血のめぐりをよくすることで、毒出ししやすい体をつくるようにしましょう」
めぐりのよい体になるための4つの柱
体の中にたまった毒素を排出して、いつでも健康でいるためには「温・食・動・想」の4つの柱をバランスよく保つことが大切です。
「温」=体を温める
毒素を排出しやすい体温の目安は36.5℃くらいです。平熱がそれくらいであれば、代謝も活発に。逆に、体温が低い人は体の冷えから毒素がたまりがちです。免疫力や自律神経も乱れやすくなります。平熱が35℃台なら「冷え性」といえるでしょう。
冷え性の自覚がなくても内臓が冷えている「隠れ冷え性」も増えています。下のリストでひとつでも該当したら、隠れ冷え性の可能性が。
隠れ冷え性チェックリスト
□ 直接おなかを触ると冷たい
□ よく顔がほてったり、のぼせたりする
□ 胃腸が弱い
□ 冷たい飲み物をよく飲む
□ 平熱が35℃台
□ 湯船につからない
□ 肩こりがある
「食」=バランスのよい食
人に必要な3つの栄養は、タンパク質(肉、魚、卵、豆類)、脂質(動物性・植物性油脂)、糖質(ごはん、パン、麺類)。これらがバランスよくそろうと、健康な体をキープできます。
しかし、現代の食事はそもそも糖質が過剰気味。主食=糖質を意識的に減らし、肉などのタンパク質、ミネラルやビタミンを積極的に摂るようにしましょう。
「動」=体の滞りを流す
運動は、体の滞りをスムーズに流してくれます。筋肉を動かすと血流が促進され、体の冷えも改善。ふだんから適度な運動を習慣にすることが大切ですが、同じ動きに偏らないように意識して。
ウォーキングやジョギングのような有酸素運動に、筋トレなどの無酸素運動をうまく組み合わせることがポイントです。バランスよく体全体を動かして気持ちよく過ごしましょう。
「想」=心の滞りを流す
生き生きと健康に暮らす土台は心のあり方にあります。いつも同じことで悩んでいると、心も滞ってしまいがちに。イライラや怒りは交感神経を刺激し、血液の流れも悪くします。
自分の心の内側の声に耳をすまして、自分を大切にする余裕をもつことが大切です。いつもと違うことをしたり、体を動かしたりすることが、心の健康にもつながります。
〈取材・文/工藤千秋 イラスト/ホリベクミコ〉
小池弘人(こいけ・ひろと)
医学博士。西洋医学中心に東洋医学や代替医療なども含めた統合医療を行う小池統合医療クリニック院長。著書に『SELF CARE BOOK 365日やさしい疲れのとり方』(翔泳社)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです