(『天然生活』2021年12月号掲載)
冬は「腎」をいたわり、精を蓄える生活を
東洋医学において「冬」とは、立冬を迎える11月初旬から立春を迎える2月頭までを指します。
「11月はまだそれほど寒くないし、ちょっと早くない?」と思うかもしれませんが、この区分を意識して、ちょっと早めから真冬の寒さを意識して、事前に体を整え備えておくとよい、と瀬戸佳子先生はいいます。
「東洋医学では体の機能を『五臓(ごぞう)』と5つに分けて考え、それぞれを季節に対応させていますが、冬は『腎(じん)』の季節。西洋医学の腎臓だけでなく、ホルモンや足腰、骨や脳などに関わり、生命力の貯蔵や成長発育、老化のコントロールなどに幅広く関わる機能です」
腎は「精」と呼ばれる生命エネルギーのもとを貯蔵する場所でもあり、冬にきちんと養生すれば精が蓄えられますが、逆に不摂生を重ねると、他の季節以上に精は損なわれていきます。
「冬は年末年始があり、年度末も近く仕事も増えがちですし、人とのおつきあいも多い忙しい時季。『ゆったりゆっくり過ごす』というのはなかなか難しいと思いますが、それでも『忙しすぎると、いつも以上に腎がダメージを受ける』と意識するだけでも変わります。疲れたらいつもより早く寝る、腎をいたわるものを食べるなど、こまめな養生を心がけてください」
体力を温存するためのOK習慣 1
睡眠をたっぷりとる
「睡眠時間は1年を通じて一定である必要はなく、日照時間が長い夏は、遅く寝て早起きするというふうに、短くても大丈夫。逆に日が短い冬は、できるだけ早寝を心がけるようにしてください」
冬の夜更かしは「腎」を消耗する行為。もし仕事や家事が多くて終わらない場合は、夜に根をつめるのではなく、早く寝て早起きして行うのがおすすめです。
体力を温存するためのOK習慣 2
季節の食材を食べる
食養生の基本は、季節の素材を食べること。旬の素材は、その季節に必要な栄養を体に届けてくれます。
冬に旬を迎える根菜類は体を温めるものが多く、大根や白菜、かぶなどは寒さで弱りがちな胃腸を助けてくれます。冷たい冬の海で捕れた魚介類の多くは、「腎」を養ってくれる役割も。
煮込みやスープなど、火を入れる調理法でいただきましょう。
体力を温存するためのNG習慣 1
ダイエットはしない
何日も断食をする、ひとつの食材だけを食べつづけるなど『極端なダイエット』は、冬には厳禁。
気温が下がる冬場は、「衛気(えき)」と呼ばれる体のバリア機能が下がりがち。この衛気をしっかり働かせるためには、十分な栄養や潤いが必要。ダイエットはこの衛気が弱まる行為なのです。
また、デトックス作用のあるお茶などは体を冷やしてしまうので注意。
体力を温存するためのNG習慣 2
激しい運動はしない
冬は体温を保ち、乾燥を防ぐために、皮膚が密になります。しかし真夏のように汗をたくさんかくような激しい運動をすれば毛穴が開き、あっという間に冷えが内臓まで到達し、衛気も損なわれます。
また、蓄えるべき体力を使い、腎を消耗することも。運動するなら、散歩やストレッチなど、「血行がよくなったな」と感じる程度でも十分です。
体力を温存するためのNG習慣 3
汗をかきすぎない
熱いお風呂やサウナは、毛穴が開きすぎ、肌の潤いも失われてしまうので要注意です。また東洋医学では、汗は「血」からできていると考えるので、発汗しすぎは貧血になる恐れも。
冬でも普通のお湯にゆっくりつかって、「温まったな」と感じる程度でOK。だらだら汗をかく入浴は避けて。
乾燥肌の人はピーリングやあかすりも要注意。
体力を温存するためのNG習慣 4
甘いものを食べすぎない
冬はお歳暮やクリスマスなど、甘いお菓子がたくさん出回る時季ですが、甘いものは胃腸を疲れさせる原因に。冷たいアイスクリーム、脂っこい生クリームやバターを使ったお菓子はとくに気をつけて。
胃腸が弱まれば衛気が弱まり、免疫力全般が衰えます。食べたくなったら、栗や黒糖などを使った和菓子、ドライフルーツなどがおすすめです。
体力を温存するためのNG習慣 5
働きすぎない
シンと静かな冬の夜は作業もはかどり、仕事や家事をしていると止まらなくなるということがよくあります。
しかし、夜更かし仕事は厳禁。エネルギーを消耗しやすい冬は、自分を追い込むような仕事の仕方は止めましょう。
そして「根をつめること」「ストレス過多」は、腎をすり減らす行為だということを覚えておいてください。
〈イラスト/松尾ミユキ 取材・文/田中のり子〉
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医学薬膳師。東京・青山の「源保堂鍼灸院」にて「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案を行っている。著書『お手軽気血ごはん』(文化出版局)が好評。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです