(『天然生活』2021年12月号掲載)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
冬の山暮らしにそなえて、体の冬じたくも念入りに
標高1180m、八ヶ岳山麓の森の奥。
日傘作家のひがしちかさんの家を訪ねると、まぶしい日差しのなかをそよぐ涼しい風が、季節の移ろいを教えてくれます。ひがしさんが東京から暮らしの拠点を移してかれこれ4年。もうすぐ5度目の冬が近づいています。
「長野は9月になれば日によって肌寒く、10月は薪ストーブに火を入れる日も。ここではうかうかしているとあっという間に冬に突入してしまうので、前もっての準備が欠かせなくなりました」
煙突掃除にタイヤ交換、雪かき道具を玄関前の風除室に出しておくなど、「もの」にまつわる準備もさることながら、近年ひがしさんがとくに気を配るようになったのが、「体の冬じたく」なのだとか。
「大好きな薪ストーブ作家のイエルカ・ワインさんに、引っ越し当初こんなことをいわれたんです。『これから山の暮らしが始まるのだから、歳をとっても動けるよう体のメンテナンスを大切にね』って。月日を重ねるごとに、その言葉が一層大切に思えるんです」
生きる喜びを感じさせてくれる、八ヶ岳の冬の厳しさ
幸い長野では、よもぎ蒸しやお灸など、自然の力を生かして体を整える知恵の持ち主との出会いも次々に訪れました。
「よいと感じたものはすぐに実践。冬の前は体を温めたり、ゆるめたり、いつも以上に心がけます」
加えてもうひとつ、最近意識しているのは「眠りの質を高めること」。
もともと上手に眠れず、深夜に目覚めてそのまま仕事をしてしまうことも多かったといいますが、『疲労回復は睡眠から』と思い直し、あれこれ試しているそう。
なかでもお気に入りは、友人に勧められたシルクの枕カバー。枕自体もベストな高さを模索中です。
思えば最初の冬は「予想以上の寒さに涙、涙だった」というひがしさん。しかしいまでは、冬の厳しさは生きる喜びを感じさせてくれる、かけがえのない体験だと感じています。
「家でどんなに考え込んでいても、一歩外に出るとキンとした寒さとともに、美しい冬の風景に包まれます。その圧倒的な強さを前にすると、多少の悩みなんて消え去ってしまうんです。家族と過ごす時間が増えるのもうれしいし、これからもすこやかな体で、冬の素晴らしさを味わえたらと思います」
ひがしさんの冬じたくのスケジュール
〈9月〉
・庭にサウナをつくりました
・薪ストーブを準備する
・土鍋を準備する
・衣替えを始める
・多肉植物を室内に入れる
〈10月〉
・ちょこちょこ大掃除を始める
〈11月〉
・車のタイヤを交換する
・カレンダーを買う
〈撮影/砂原 文 取材・文/玉木美企子〉
ひがし・ちか
一点ものの日傘を中心にオリジナル商品を展開する「Coci la elle」主宰。コラージュなどの技法も取り入れ、創作活動を行なう。https://www.cocilaelle.com/