(『天然生活』2020年2月号掲載)
「香りの手だて」と心をともす物語をひとさじ
信州は蓼科の森の中。ハーブショップ「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」では、ゲストのためのハーブティーが今日もいい香りの湯気を立ちのぼらせています。
萩尾さんはこの地に店をかまえて40年以上ものあいだ、自然の中で育んだハーブとアロマテラピーを用いて自分自身を整え、たくさんの人たちをいやしてきました。
「香りの効きめ」は、穏やかに見えて確かなもの。五感のなかでも、脳にダイレクトに刺激を伝えられるのが嗅覚だからです。
「香りは脳に作用し、自律神経や免疫機能のバランスを整え、痛みをも和らげます。また、人間の本能に語りかけ、感情にもまっすぐ届く。病で意思疎通がかなわない人でもハーブの花束を顔に近づけると、ぱっと瞳が輝くんです」
さまざまな症状や場面において、使いどころが広いのも香りの利点です。萩尾さんはその日の体と心の状態に適したハーブティーを飲み、入浴や睡眠のときにも香りの力を借りてリラックスを深めます。
「忙しいなかでも息をつく時間を少しでももち、緩急をつける。そうやって日々小さくバランスをとっていくことが大切だと思います。がんばりすぎのいまの人にも、必要なことじゃないかしら」
心と体を温める
標高1,000mを超える蓼科は、冬にはマイナス20℃になることも。「冷えると元気がなくなる」という萩尾さんは、ハーブティーを飲んだり湯たんぽを使ったり、あの手この手で心身を温める。
「大事なのは体を動かすこと。毎朝、NHKのテレビ体操を習慣にしています。短い時間だけど理にかなった運動で、とてもいいですよ」
大切な朝ごはん
食事は朝と昼はしっかり、夜は軽く、が基本。タンパク質、カルシウム、ビタミン、糖質など、栄養バランスを考えた朝食で1日を元気にスタート。
「くるみはオーブンでローストして香ばしく、サラダの青菜やハーブは庭の摘みたてです。カルシウムが脳の健全化に役立つと聞き、小魚やミルクティーで摂るようにしています」
\ 素材の組み合わせが魅力の手づくりジャム /
神奈川県茅ヶ崎の「メゾンボングゥ」のコンフィチュールがお気に入り。
「アプリコットとベルベーヌなど、ほかにはない味わいです」
質のよい眠り
1日の疲労をとり、明日への英気を養う睡眠。悩みの種だった枕を「タオル枕」にすることで首の痛みが改善され、ぐっすり眠れるように。
「私は首が悪いのですが、整体の先生に聞いて、たたんだタオルを枕にしたらとてもよかったの。旅先でもホテルのタオルを枕にします。寝付けないときは精油をぬって心を鎮めます」
<撮影/寺澤太郎 取材・文/熊坂麻美>
萩尾エリ子(はぎお・えりこ)
ハーバリスト。諏訪中央病院にハーブガーデンをつくり、患者にアロママッサージのボランティアも行う。著書『香りの扉、草の椅子』(扶桑社)、『あなたの木陰』(扶桑社)が好評発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです