• 健康な心身を保つためには、不調の原因に向き合い根本を理解することが大切。自然由来の生薬を組み合わせて処方される「漢方薬」は、やさしくいたわり、じっくり治すケアにもってこいです。漢方薬局「杉本薬局」の三代目・杉本格朗さんに、秋から冬にかけての季節に知っておきたい「冷え」の不調におすすめの養生と漢方薬を教えていただきました。
    (『天然生活』2022年11月号掲載)

    「冷え」には、ただ温めるだけでなく“バランス”が大事

    不調の原因=冷えというイメージが強く、“とにかく体を温めて”という風潮があります。

    でも、ただ温めればいいのではなく、大事なのはバランス。体の中には温める力(陽の気)と、冷ます力(陰の気)のふたつがあり、そのバランスをイーブンに保つことで、体が正常に働くのです。

    この温める力が十分ではなかったり、冷えやすい環境に長く身をさらしたりすると、冷ます力が旺盛になり不調を引き起こすのです。

    温める力が十分でれば、血液がしっかりめぐり、体温が維持されます。温めすぎると「陽」の力が強くなりすぎ、体を潤したり冷ましたりする力が弱まります。それがほてりや乾燥につながることも。

    画像: 漢方家に聞く“秋から冬”の養生「冷え」におすすめの漢方/杉本薬局の漢方相談室

    冷えも種類はさまざま。処方もそれぞれです

    画像: 神奈川・大船で70年以上続く漢方薬局「杉本薬局」の三代目・杉本格朗さん。料理家の野村友里さんとの縁で、グロサリーショップ「イートリップ ソイル」に漢方相談所も構えます

    神奈川・大船で70年以上続く漢方薬局「杉本薬局」の三代目・杉本格朗さん。料理家の野村友里さんとの縁で、グロサリーショップ「イートリップ ソイル」に漢方相談所も構えます

    画像: 生薬が並ぶ棚は漢方薬局ならでは。この冬には改装を予定していて、さらに広い世代になじみやすい薬局にリニューアル予定(2022年9月掲載時)

    生薬が並ぶ棚は漢方薬局ならでは。この冬には改装を予定していて、さらに広い世代になじみやすい薬局にリニューアル予定(2022年9月掲載時)

    画像: カウンセリングルームの棚のディスプレイ

    カウンセリングルームの棚のディスプレイ

    「冷え」の処方

    処方①
    当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

    体を温めて寒さを散らす「温経散寒剤(うんけいさんかんざい)」の代表選手。セリ科の多年草・当帰(とうき)や、シナモンの樹皮である桂皮、生姜など「温め」の生薬が配合されている。

    画像: 上から時計回りに:当帰(とうき)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)

    上から時計回りに:当帰(とうき)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)

    処方②
    温経湯(うんけいとう)

    血を補い、めぐらせ、体を温める。潤す働きをもつ生薬の麦門冬(ばくもんどう)、阿膠(あきょう)なども配合されているので、ほてりがあるときにも効果が期待できる。

    画像: 上から時計回りに:麦門冬(ばくもんどう)、半夏(はんげ)、当帰(とうき)

    上から時計回りに:麦門冬(ばくもんどう)、半夏(はんげ)、当帰(とうき)

    処方③
    八味地黄丸(はちみじおうがん)

    8種類の生薬で構成され、五臓のうちの「腎」の機能を高め、冷えを伴う腰痛や下半身のだるさ、頻尿、夜間尿などのお悩みに。

    画像: 上から時計回りに:地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)

    上から時計回りに:地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)

    こんな症状には

    手足が冷える

    手足の先まで血がめぐっていないことから冷えを感じるタイプ。筋肉量も不足気味かも。
    ⇒処方:①/②/③

    トイレが近くなる

    水分をそれほど摂ってないのに、頻繁にトイレに行きたくなる人は、腎の冷えが原因かも。
    ⇒処方:③

    冷えとほてり

    上半身がのぼせて下半身が冷えるなどの症状。体内に熱がこもっている場合も。
    ⇒処方:②

    冷えと痛み

    冷えていることで体がこわばり、血行不良から肩こりや腰痛、頭痛を引き起こすことも。
    ⇒処方:①/②/③

    冷えてだるい

    温める力や、気が不足し、手足がむくんでしまう。疲労感や倦怠感がある場合も。
    ⇒処方:③



    〈撮影/近藤沙菜 イラスト/須山奈津希 構成・文/鈴木麻子〉

    画像: 神奈川県鎌倉市大船1丁目25-37

    神奈川県鎌倉市大船1丁目25-37

    杉本薬局(すぎもとやっきょく)
    1950年の創業以来、一人ひとりの体質に合った漢方薬や自然薬を提案。三代目の杉本格朗さんと弟の哲朗さんらと家族で経営。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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