(『天然生活』2023年1月号掲載)
きのこ狩りは輝夫さん、料理はより子さんが担当
より子さん、輝夫さんご夫妻は、海と山の自然の恵みが豊かな町、葉山に50年以上暮らしています。
年を重ねてからは、日々の暮らしを楽しく、居心地よくすることを大切にしているそうです。
何かするときは、「なんでも夫婦ふたりで」というのではなく、お互いに興味のあることを楽しむというスタンス。
輝夫さんは日々野菜づくりを楽しんでいますが、より子さんは一緒に畑に行くことはなく、輝夫さんが育てた野菜を使って3世帯9人という大家族のために食事をつくったり、保存食を工夫したりすることに喜びを見いだしています。
お互いに無理しない、自然体の暮らしです。
もちろん夫婦ふたりで楽しむ旅もありますが、秋のきのこ狩りは輝夫さんだけのイベント。
幼少のころからの友で、近所に住む中村さんと中村さん率いる「面白クラブ」の恒例行事なのです。
輝夫さんが持ち帰ったきのこをどう料理するかは、より子さんの腕の見せどころ。
一年に一度、たっぷり秋の味覚を満喫するためのメニューを工夫しています。
きのこ三昧のメニューで、秋の味覚を味わう
輝夫さんがきのこ狩りから戻った夜、より子さんがさっそくつくるのがまいたけのフライ。輝夫さんも大好きな一品です。
「まいたけといえば天ぷらですけど、フライも新鮮でしょう? ふだんは一緒に魚も揚げて盛り合わせますが、この日はまいたけだけをたっぷり味わいます」とより子さん。
一般にフライは粉、卵、パン粉とつけていきますが、まいたけはかさが重なりすき間ができやすいため、より子さんはひと工夫。
「卵と粉と水でつくったバッター液を使うと満遍なくパン粉がつき、サクッと揚がるんです」
また、いろいろなきのこがたっぷり手に入るこのチャンスに、常備菜として、きのこのおかか煮もつくります。
もちろん、スーパーなどで手に入るきのこ類でもOKです。
「きのこは種類によってうま味も食感も違うので、好みのものを何種類か用意します。水は加えずに、しょうゆ、酒、みりんだけで味つけをします。かつおの削り節を加えるとだしの代わりになりますし、きのこから出たうま味もしっかり吸ってくれます。冷蔵庫で1週間くらい持ちますよ」
坂井家では炊きたてのごはんに混ぜてきのこごはんにするほか、大根おろしと混ぜる、サラダに入れる、冷奴のトッピングにする、ほうれんそうとあえるなど、副菜づくりにも重宝しているそうです。
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〈撮影/山田耕司 構成・取材・文/野上郁子(オフィスhana)〉
坂井より子(さかい・よりこ)、坂井輝夫(さかい・てるお)
より子さん76歳、輝夫さん83歳。ふたりの出会いはより子さんが25歳のとき、勤務先だった横須賀の米軍基地で。現在、神奈川県葉山町に娘家族、息子家族とともに3世帯9人で暮らす。ふたりともに、日々の生活を楽しみ、人生を軽やかに生きている。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです