(別冊天然生活『これまでも、これからも 歳を重ねて楽しむ暮らし vol.2』より)
グレイヘアは、この先も風通しよく過ごすために必要なもの
そしていま、あご下くらいまで白くなり、髪をまとめるとほぼ白に。
「いまの髪色は、自分に合っている気がします。男性や、私よりも年上の女性は、白い髪は老けて見える、まだ若いのになぜ、とおっしゃる方もいるのですが、私にとってグレイヘアは、これから風通しよく過ごすために必要なもの」
髪色と同時にファッションも、より大人仕様へ
時を同じくして、ファッションにも少し変化がありました。とくに変わったのが靴やバッグの小物類。
「設計や空間ディレクションの仕事に携わるようになり、打ち合わせの場所がホテルのラウンジ、ということも増えました。歩きやすくて、きちんと見える靴が欲しくて、いろいろ探した結果、仕事では『エルメス』のローファー、プライベートでは『シャネル』のフラットシューズが、しっくりすることに気づいたんです」
「昔は、自分がシャネルを買うなんて、想像もしていなかった」と笑う広瀬さん。
丹念につくられたハイブランドの逸品は、年齢、髪色、ファッション、仕事に加え、いまの広瀬さんになじむ、「等身大」となっているのかもしれません。
年齢ごとにさまざまな選択をしながら、「いい感じ」に
「実際問題として、年齢が上がれば体力面、健康面などにいろいろな問題が出てきます。40代では普通に自分の年齢をいえていたのが、50代ではなぜかいいにくくなったり。躊躇せずいえるようになるには、覚悟が必要だった。グレイヘアもそのひとつかもしれません。
年齢は、そのときになってみないとわからないですし、40代から50代へのギアと、50代から60代へのギアは全然違うだろうなと思います。でも、不安ばかり考えてもしょうがない。そのときどきで選択をしながら、自分にとっていい感じになればいいなと」
将来はわからないけれど、心配しすぎていまを楽しめないのはつまらない、という広瀬さん。年齢を受け入れ、いまを楽しむ。その覚悟を、美しいグレイヘアが静かに、力強く語っているようです。
〈撮影/井上実香 取材・文/長谷川未緒〉
本記事は別冊天然生活『これまでも、これからも 歳を重ねて楽しむ暮らし vol.2』からの抜粋です
心と体の変化を受け入れながら「いま」を楽しむヒント
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広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト・設計事務所共同代表。『50歳からはじまる、あたらしい暮らし』『55歳、 大人のまんなか』(ともにPHP研究所)など、年齢と向き合うエッセイや、衣食住をテーマにした著書多数。並行してホテルや店舗などのディレクション、フードアドバイス等にも携わる。
インスタグラム:@yukohirose19