ワクワクする学びを支えに、ゆっくり進む
── フードコーディネーターの先駆けである祐成陽子さんのスクールにも通われ、昨年からは通信制の放送大学に入学されたそうですね
薬膳を広めるために、料理の写真やレシピをSNSにあげていましたが、盛り付けも写真もへたくそで。
「これじゃ伝わらない!」と、祐成先生の教室で料理の見せ方やレシピの書き方を教えてもらい、発信の基礎を学びました。
そして薬膳を勉強していくうちに東洋医学だけでなく健康にまつわるより広い知識を持ちたいと思うようになり、放送大学へ。
去年、食のことを一通り勉強し、今年は運動、睡眠、ストレス、心理学などの授業を受けています。
さらに、この先を豊かに過ごす知恵をつけるために、死生観やグリーフサポート、高齢期特有の疾患にまつわる社会制度についても学んでいます。
興味のある科目だけやっているので、とっても楽しいですよ。
── すごいですね…! 薬膳をきっかけに、学ぶ意欲がどんどん高まっている感じでしょうか
「そのモチベーションはどこから?」なんて聞かれたりしますが、単純に勉強が好きなんでしょうね。私からしたら、ランニングやヨガをしたりジムで鍛えている人が不思議でしょうがない(笑)。
健康にとって運動がいかに大切か、知識はパンパンに得たのに、実践に移せないんです。運動キライを克服するのが今後の課題ですね。
── 50代からでも、麻木さんのように勉強を始めたり、なにか趣味を見つけたり、新しい道に踏み出すことで、その後の人生を明るく生きていく力が蓄えられそうです
「もう年だから」と遠慮せず、思いたったことを気楽に始めてみてほしいですね。やってみて、違うと思ったらやめればいいんです。ピンとこないものに時間やお金、体力を注ぐのは、我々の世代には不毛ですから(笑)。
私が薬膳を続けているのは、楽しかったからです。いろいろなことに手を出したり、あちこち物見遊山的に出かけたりしているうちに、「コレだ!」と思う何かが見つかるんじゃないかしら。
これからの人生を穏やかに進んでいくためにも、心がワクワクするものを持っていると、自分の「軸」ができて支えになると思います。
50歳からの10年は、女性にとって激動です。社会や家庭での役割が変わり、ホルモンバランスの乱れや老化で不調が日常になる。でもそれは仕方のないこと。
ライフステージが変わったことを受け入れ、今の自分に合う方法にシフトすることも大切だと思っています。
例えば私は、仕事と子育てで忙しかった30~40代は、料理はとにかく簡単でスピーディに、娘のためにボリューム優先でした。
でも今はほぼひとりで時間にも余裕があるから、薬膳を考えながら少量を丁寧につくっています。昔は絶対やらなかったアク取りも丹念にして(笑)。
料理だけに限りませんが、速度を緩めることで見えてくる景色や世界があります。
それに気づけたことも、年を重ねた収穫ですね。
※ 前編では、脳梗塞・乳がん・更年期を乗り越えてたどり着いた「ほどほど」の生き方と薬膳との出合いをお届けしています。
<撮影/星亘 取材・文/熊坂麻美>
麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
1962年11月12日、東京都生まれ、学習院大学法学部中退。知性派タレントとしてクイズバラエティ番組を中心に出演する他、司会、コメンテーターとしても活躍。2010年に脳梗塞、2012年に初期の乳がんが見つかったことから、検診の大切さや自身の体験を、講演会や情報番組などで伝えている。そんな経験から食事を見直し、中でも「薬膳」に興味を持つ。その後、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。2020年には温活指導士の資格、2021年には登録販売者の資格も取得。タレント業の傍ら、食を通して「体を温め、免疫力を高める」という考えや食事などを多方面で提案している。著書に「おひとりさま薬膳』(光文社)など。
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「薬膳料理」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。「体によさそうだけど、おいしくない」「体によさそうだけど、食材が手に入りにくそう」「体によさそうだけど、調理が難しそう」......日々の生活に取り入れるとなると、ハードルが高そうに感じられるけど、実は全然そんなことはありません。
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※全レシピ、作り方動画付き