(『天然生活』2017年9月号掲載)
より響きがよく、より柔らかい言葉を選んで
「一時期、テレビのクイズ番組でも話題になった『ご苦労さま』と『お疲れさま』の使い分け。
『ご苦労さま』は目上の人には使ってはいけないというのが番組内での“正解”でしたが、由来を調べてみると、実は、どちらも間違いではないのです。
こんなふうに、〈正解/不正解〉、〈いい/悪い〉が先に立って、言葉遣いに対して寛容でなくなっている現状があります」
こう話すのは、日本語についての多くの著書をもつ、国語講師の吉田裕子さん。
「ですが、私が思うのは、こういう使い方をするとより響きがよい、より柔らかい、快い……そんなふうに言葉を選ぶのが理想、ということです。
そもそも言葉というのは、より素敵な感性をもちたいとか、会話する相手に不ゆかいな思いをさせたくない、とか思って、みずから学ぶこと。
自分が学んだからといって、相手の言動に対して、『その使い方は間違い』と目くじらを立てるのは本末転倒です」
服装と同様、“ふさわしい”言葉遣いを心がけて
とはいえ、どんなふうに言葉を選び、どのように使うかによって、人の印象は大きく変わるもの。
「言葉というのは、服装と似ています。若いうちは、流行を取り入れた新しいファッションに挑戦するのもよいと思います。
しかし、年齢を重ねるにつれて自分に似つかわしい服装が定まっていくように、言葉も相手との関係性を意識しつつ、自分の雰囲気によりふさわしいものを使えるようになるとよいのではないでしょうか。
洋服選びはTPOが大切、といいますが、会話もTPPOが大切です」
会話の基本はTPPO
会話の基本は、「いつ(Time)、どんな場で(Place)、どんな人と(Person)、どういう機会に(Occasion)」話すのかというTPPOをわきまえること。状況に応じた使い分けを心がけて。
よりふさわしい言葉を使いこなすためには?
では、自分によりふさわしい言葉を使いこなすためには?
「とりあえず無難、というリクルートスーツのようなマニュアル言葉から一歩進んで、大人の品格が感じられるような言葉遣いができると素敵ですね。
言葉というのは“心の引き出し・心のひだ”ですから、友人同士のときは『超楽しかった』でも、目上の人との会話のときは、さりげなく『たいへん楽しゅうございました』と、言い換えられるようにしましょう。
さまざまな表現を数多く知って、実際に使ってみることで、より豊かな日本語や、相手に合わせた快い日本語が使えるようになります」
美しい日本語のために 意識したいポイント10
暮らしのなかで、以下のポイントを意識すれば、話し方や会話に美しさが生まれます。
● 角の立たない、柔らかい言葉を使う
● 専門用語を多用しない
● 安易にカタカナ語を使わない
● 聞いて理解しにくい熟語は言い換える
● 気遣いのある相づちを打つ
● 人の話をさえぎらない
● 聞き取りやすいスピードで話す
● 年齢や立場にふさわしい、品格のある言葉を使う
● 敬語を正しく使い分ける
● 手紙やお礼状を書く機会をもつ
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〈監修/吉田裕子 取材・文/宇野津暢子 イラスト/松尾ミユキ〉
吉田裕子(よしだ・ゆうこ)
国語講師。東進ハイスクールで古典を指導しつつ、毎日文化センターなどで大人向けの古典講座・エッセイ教室も担当する。担当音声配信Voicy「毎朝古典サプリ」などメディアの発信にも努める。著書に『思いが伝わる語彙学』(KADOKAWA)amazonで見る など。三鷹古典サロン裕泉堂を運営。
● 三鷹古典サロン裕泉堂
https://www.yusendo.club
● X:@infinity0105
https://twitter.com/misa_enomoto
● Voicy:仕事と人生に効く!毎朝古典サプリ
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※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです