Q:40代後半、逆流性食道炎で胃もたれなど不快感が。無理なくできる改善策はありますか?
気持ち悪いのは嫌だけれど、食事のガマンが多いのもちょっと……
「逆流性食道炎」に悩まされています。40代後半から胃もたれが激しくなってきて、食事をしてすぐに横になると気持ち悪くなってしまったり、ゲップが出そうになるような不快感があったりします。
お医者さんから炭酸飲料を控えたほうがいいといわれたのですが、炭酸飲料が大好きなので、飲めなくなるのはつらくて……。「この食材はNG」という以外に、無理なくできる改善策はありますか?
薬を飲み続けなければいけなくて、止め時もわかりません。
(さとこさん 50代/主婦)
A:胃酸の逆流を防ぐには、服装や睡眠の仕方、食事法を工夫しましょう
控えたい食材はありますが、食べ方・飲み方の工夫で防ぐことも可能です
数年で約5倍に増加している「逆流性食道炎」
今回はさとこさんからの、胃もたれや食事をしてすぐに横になると気持ち悪くなってしまったり、ゲップが出そうになるような不快感があるとのご相談です。おっしゃるとおり、これは逆流性食道炎の症状に当てはまると思います。
逆流性食道炎は食べたものを消化・分解する胃酸が、何らかのきっかけで食道へ逆流することで炎症が起こるのが原因です。
症状としては呑酸と言って、口やのどに酸っぱい胃液が込み上げる、嚥下障害と言ってのどが詰まったり、食べ物を飲み込むのが困難になったり、みぞおちから胸にかけて突き上げるような感じの胸焼けが起こったりします。
他にも食欲不振や声がかすれる、胃もたれ、ゲップ、お腹の張りなどの症状を伴う場合もあります。高齢化や食の欧米化により、患者数はここ数年で約5倍に増加しているという報告もあります。
原因は「加齢による筋肉の衰え」と「食生活の乱れ」
原因としては大きく分けて2つです。
ひとつめは加齢による下部食道括約筋の衰えです。
胃と食道の境目には下部食道括約筋という筋肉があり、正常時は食べ物が通過する時にだけ、筋肉が緩みます。しかし、加齢とともにこの筋肉が衰え、緩んだ状態になり、ちょっとした刺激で胃酸や食べ物が逆流してしまいます。
さとこさんの食事をしてすぐに横になると気持ち悪くなってしまうというのもこの影響ですね。
2つめは食生活の乱れによる胃酸の過剰分泌です。
食べ過ぎ、早食いの人は胃酸が過剰分泌され逆流が起こりやすくなります。また脂肪分の多い食事は胃酸の過剰分泌を促すだけでなく下部食道括約筋を緩ませる原因にもなります。
逆流を防ぐためには生活の中で胃酸を逆流させないために胃にやさしい食事が大切です。さとこさんが、主治医の先生から炭酸飲料を控えるように言われているのも胃にやさしい食事の工夫のひとつです。
胃酸を逆流させないために心がけたい3つの工夫
逆流を防ぐのに心がけたいことは、ひとつめは服装の工夫です。
サイズの合っていないズボンやスカートでお腹を圧迫しない、ベルトを締めすぎないことが大切で、お腹周りに少し余裕を持たせ、腹圧が上がり、逆流するのを防止しましょう。
2つめは睡眠の体勢です。横になって頭がお腹より下がると胃酸が逆流しやすくなるため枕やタオルなどを使って少し頭を高くして眠るのもよいでしょう。水平な面から20〜30cmくらい頭を上げて寝るようにするとよいと思います。
胃は左右非対称で左が大きくなっています。そのため、横向きに寝る時には左側を下にして胃酸を溜めやすくすると逆流を防ぐことができます。
そして3つめは食事です。胃酸分泌を過剰にする控えるべき食べ物としてはチョコレート、柑橘類、コーヒー、アルコール、炭酸飲料です。これらのものをできるだけ控えて食べ過ぎ、飲み過ぎに注意してください。
さとこさんは炭酸飲料を控えるのが難しいようなので、炭酸飲料を摂ってもよいのですが、コップに移して飲むようにして、小さめのコップなどいつも炭酸飲料を飲むときに使うコップを決めて、摂りすぎないようにするのもよいかもしれませんね。
食事の際には腹八分目、早食いをせずゆっくり食べる。一口に30回を目安に噛むようにする、熱いものは冷ましてから飲んだり食べたりするようにする、食後から寝るまでに3〜4時間はあけるようにするとよいでしょう。
それでも症状が改善しない場合には胃酸を抑えるお薬などもありますが、胃酸分泌も消化のためには必要ですので、上記の生活習慣で改善すれば、減薬や休薬ができると思います。
逆流性食道炎におすすめの漢方
漢方では、胃腸の動きをよくして逆流を防ぐ半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や、胃酸を中和し、胃の調子を整える安中散(あんちゅうさん)などの漢方薬もあります。
主治医の先生の指示に従いながら、ご自身に合う方法を試してみてくださいね。
今回の記事がさとこさんはじめ、逆流性食道炎にお悩みの皆様の少しでもお役に立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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