• 東京から北海道へ移住を決めた「あたらしい日常料理 ふじわら」の藤原奈緒さん。今ある肩書きにとらわれず、自分らしく軽やかに生きる。人生の転機を迎え、あたらしい自分に出逢っていく冒険の日々を綴ります。今回は、移住を決めたあとの思いがけない出会いのお話について。

    人生の転機にあらわれた、大切な人

    はじめてその人に会ったのは、数年前の6月でした。

    千葉で行われるそのクラフトイベントは尊敬する友人が運営していて、場所も、集まる人も気持ちがいい。友人はわたしを見るなり満面の笑みで、「紹介したい人がいるのー」と、無線で彼を呼び出した。

    トラブル対応かな?と小走りでやってきた彼は、仕事中に突然わたしを紹介されても全く動じていなかった。柔らかいけど冷静な人、というのが第一印象。

    画像: 人生の転機にあらわれた、大切な人

    半年後にみんなで食事をした。共通の友人夫妻が2組と、彼、わたしの友人、わたし。(なぜか独身が3人。笑)その日は全然わからなかったけど、どうやら好意をもってくれたらしく、イベントや店まではちょくちょく足を運んでくれるものの、慎重すぎていっこうに進む気配がないので、最初のデートはわたしから誘った。

    そのあと何度か声をかけてくれたのだけど、タイミングがことごとく合わず、そのうち連絡も減ったから、ご縁がなかったのだな、と思っていました。

    もし傷つきたくなくてもじもじしているのなら嫌だな、と思ったのもある。わたしも経営者のはしくれなので、リスクを取らない人とは対等に付き合えない、なんて思ってしまう。

    人生は永遠じゃないんだぞ

    そこからまた半年後。長沼町への移住を決めて、物件や工事、金融機関への申し込みに明日から北海道へ行く前の日のことでした。

    千葉の別の友人が自宅をリノベーションしたので、見せてもらいがてら泊まりにいったら、その彼からメッセージがとどいた。そこに居合わせた、彼を紹介してくれた友人が知らせたらしい。

    「今度会いましょう」

    画像: 人生は永遠じゃないんだぞ

    わたしはすっかり酔っぱらっていた。(え、今???てか、今度っていつだよ。)

    自分のなかではとっくに終わっていたから、もう会わないかもしれないし、それなら正直に言おう。お酒の勢いも借りて、「人生は永遠じゃないんだぞ」と返事した(!)。

    そうしたらその場に会いに来て、みんなの前で「付き合ってください」というので、酔っ払いの女子たちは大いに沸いたのでした。

    彼はどうやら、私が思っていたような人ではないらしい。

    からだはこたえを知っている?

    翌日空港まで送ってくれた彼の車の中で、当たり障りのない会話をするふたりがちゃんと恋愛できるのか、わたしは考えていました。

    でも、気が付いてしまった、自分のからだに全然力がはいっていないことに。そういえば、最初のデートで鎌倉に行ったときも、わたしはふにゃふにゃしていた。わたしのからだはこの人の前で安心している! それを信じてみよう、そう思ったのでした。

    画像: からだはこたえを知っている?

    若いころは惚れっぽいタイプだったと思う。だけど、料理の仕事をはじめてからは、誰かと約束するような付き合いはしてこなかった。

    ずっと時間と余裕がなかったし、ずいぶん大人になってからは、仕事の人格で人とうまく付き合うことはできても、ふじわらの藤原さんじゃない、内側の自分で誰かとどう付き合ったらいいかわからなくなっていました。

    感情の波が大きい。片付けができない。意外とすぐ泣く。かなり強いけどだいぶ弱い、そういう自分で。

    毎週末、片道2時間かけて彼は会いに来てくれました。わたしはだんだん安心していって、そしてまた不安になっていきました。相手の存在を得難い、大切だと思うほど 、果たして自分は移住していいのだろうか?

    そう彼に伝えたら、「絶対やったほうがいい。やらないと後悔するんじゃない? 僕たちのことならなんとかするから大丈夫だよ。」

    そんなふうに、彼には何度も驚かされました。

    北海道と千葉、思いがけない2拠点生活

    画像1: 北海道と千葉、思いがけない2拠点生活

    今、ふじわらの製造所を彼の住む、千葉の成田に作っています。

    北海道に住まいを移すことは決めたものの、わたしはずっと、東京で作ったブランドの製造拠点を北海道に持っていくことはイメージできないでいました。

    家業を継いでいる彼も事務所を移転するタイミングにあって、それなら、これから建てるから一緒に作ろう、という運びに。

    成田と長沼の拠点は、どちらも空港から30分以内。LCCは毎日何本も出ていて、2拠点にはちょうどいい距離感といっていいと思う。そうやって、2拠点生活に舵を切ることになりました。

    画像2: 北海道と千葉、思いがけない2拠点生活

    わたしは気がついたら鎧を脱いでいたようで、すぐふざけて変顔をしたり踊ったりする人になりました。こんなにひょうきんな人が自分の内にいたのだな、と驚いています。内側の自分、インナーチャイルドが癒されたよう。

    全部偶然で、1年前にはなかったこと。人生って面白い。



    画像: 撮影/伊藤徹也

    撮影/伊藤徹也

    藤原 奈緒(ふじわら・なお)
    料理家、エッセイスト。“料理は自分の手で自分を幸せにできるツール”という考えのもと、商品開発やディレクション、レシピ提案、教室などを手がける。「あたらしい日常料理 ふじわら」主宰。考案したびん詰め調味料が話題となり、さまざまな媒体で紹介される。共著に「機嫌よくいられる台所」(家の光協会)がある。
    インスタグラム:@nichijyoryori_fujiwara
    webサイト:https://nichijyoryori.com/

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