(『天然生活』2019年11月号掲載)
既製品を手直ししてつくった、小さな平屋の台所
福島・三春町で器と生活道具の店を営む長谷川ちえさんは、2019年の7月に引っ越しをしました。
ほどよいサイズ感や佇まいが気に入り、「ずっと目をつけていた」という築約70年の平屋が新たな住まいです。
住宅建築の設計・施工に携わる夫の大輔さんと相談して、味のある建具は生かしつつ3つの部屋をつなげ、ワンルームにリノベーション。
その半分以上のスペースがダイニングキッチン、残りが寝室というシンプルな空間です。
「食べると寝るがしっかりできれば十分だよねと夫と話して。おかげで小さな家ながら、いままでで一番広い台所になりました」

漆喰の白壁と無垢材が調和した温かくも清々しい空間。テーブルは「工房イサド」でオーダーした天板と市販の脚を組み合わせている
風が抜ける気持ちのいい台所は、無垢材のフローリングとひと続きにも見える、天然木の扉が印象的。レトロな木枠の窓の向こうに光と緑が広がり、あつらえたかのようにフィットしています。
実はこの台所、元はワインレッドの化粧板の扉が付いた、ホームセンターのシステムキッチンだったというから、驚きです。
「最初はシンプルなデザインが気に入って、業務用キッチンを検討していたのですが、地元の大工さんにすすめられたホームセンターの既製品のキッチンもつくりは悪くないし、何より機能的で。
それで、夫のアイデアで、地元の木材を使ったり、少し手を加えたりすることにしたのです」

「窓に面しているから、いつも気分よく料理できます」と長谷川さん
引き出しや棚に使った木材は、福島県産のクルミ。大輔さんが地元の林業家と一緒に伐採や製材にも関わり、その木材を地元の職人が扉に仕立てました。
上の棚の扉は抜け感を出すために波ガラスを入れ、引き出しの取っ手やフックは真鍮製のシンプルなものに。設置されていたIHコンロは火力の強いガスコンロに付け替えました。
こうしてシステムキッチンの機能性はそのままに、オンリーワンの台所が完成したのです。
「オーダーキッチンでなくても、既製品をカスタマイズすることで、好みの台所をつくることもできる。私にとっては大きな発見でした」
〈撮影/有賀 傑 取材・文/熊坂麻美〉

長谷川ちえ(はせがわ・ちえ)
2016年、東京から福島県三春町へ移転。近著に、三春での暮らし、季節ごとの風景や出来事を綴った『三春タイムズ』『続・三春タイムズ』(ともに長谷川ちえ文・shunshun絵/信陽堂)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
* * *
天然生活2025年5月号では、台所の特集をしています。ぜひあわせてお楽しみいただけましたら幸いです。