Q:季節の変わり目(梅雨から夏)の手荒れを和らげる対策が知りたいです

毎年の梅雨どきの手荒れから卒業したいです……
毎年、季節の変わり目(とくに梅雨から夏にかけて)に手荒れがひどく困っています。
洗剤なども肌にやさしいものを使っているつもりですが、この季節は水を含んだような小さなプツプツが出たり、かゆみもひどく掻くと汁のようなものが出てジュクジュクしたり、荒れも広がっていき水に触れるとしみてさらにかゆくなり、料理以外の日常生活にも支障をきたしています。
ステロイド剤に頼るのも抵抗があり、なかなか皮膚科にも行けません。
原因も知りたいとは思うのですが、まずはふだん気をつけた方がよいことや、症状を緩和できるような漢方薬や対策などのアドバイスをいただけるととても助かります。
(くま さん/49歳、女性)
A:「汗疱」の可能性が。除湿や換気を心がけて、ジュクジュクとおさらばしましょう

汗のつまりが原因かもしれません。よく乾燥させましょう
梅雨どきに多い「汗疱」とは
今月は、くまさんからの「季節の変わり目(とくに梅雨から夏にかけて)の手荒れ」についてのご相談です。
手荒れの原因としていくつか可能性があるのですが、梅雨から夏の時期に水を含んだような小さなブツブツが出るという点から、汗疱の可能性があります。
汗疱とは、手のひらや足の裏などに2~5mmほどの小さい水ぶくれや皮むけが突然生じる病気のことです。
これは夏の初めに現れることが多く、数週間で自然に治るとされていますが、毎年季節の変わり目ごとに繰り返されることもあります。
原因としては、汗は皮膚の奥にある汗腺でつくられ、汗管という汗を出す管を通って、皮膚の表面に出るのですが、大量の汗をかいたり、汗管が狭くなったりなど何らかの理由で汗が皮膚の表面に出ずに溜まり、その汗の溜まりが「水疱」になることが原因です。そのため別名を「異汗性湿疹」ともいいます。
汗疱は症状が軽い場合には自然に治ってしまうのですが、炎症がひどい場合やかゆみの症状が強い場合などには、掻くと余計に炎症がひどくなるため、薬物治療が検討されます。
「汗疱」による炎症やかゆみへの対策(薬とセルフケア)
炎症に対してはステロイド外用薬や保湿効果のあるワセリンなどを使用します。かゆみに対しては抗アレルギー薬などを使用します。
くまさんはステロイドに頼るのは抵抗があるとのことなので、自分でできるセルフケアとしては、洗い物などの水仕事を極力控え、入浴や手洗いなどで皮膚を濡らした場合には必ず清潔なタオルなどで水分を取り除き、よく乾燥させることが大切です。
汗をかいたときも速やかに拭き取るようにしましょう。湿気を帯びすぎないように屋内では除湿や換気をすることも大切です。
ふだんの手荒れ予防法
また汗疱を予防するためには日頃から手足を清潔に保ち、水分や汗を小まめに拭き取ることが大切です。シャンプーや洗剤など手足に触れるものは、ノンシリコンタイプや天然成分でできたものを使用することもおすすめです。
まだはっきりとはわかっていない部分もあるのですが、金属アレルギーが関与しているという説もあり、歯の治療で使用している金属製の詰め物などを取り除くと改善するという報告などもあります。
「汗疱」におすすめの漢方
漢方薬では汗を減らしてお肌を強くする作用のある防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、ストレスや緊張で汗をかきやすくなることから、ストレスや緊張を抑える四逆散(しぎゃくさん)などが用いられます。
「汗疱」以外の手荒れの症状の可能性
また「汗疱」以外にも、水を使用することで皮膚の皮脂が失われ、皮膚のバリア機能が低下して起こる手湿疹(別名主婦湿疹)や、喫煙や鼻、喉の炎症が関与しているといわれている掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などの可能性もあるので、あまりに炎症がひどかったり、痒みがひどい、あるいは症状が長引く場合には、一度皮膚科を受診されておくのも安心です。
今回の記事がくまさん始め、手の湿疹にお悩みの皆様の少しでもお役に立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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