(『天然生活』2023年6月号掲載)
すこやかに過ごすための食事と暮らしの知恵
梅雨時季には頭が痛くなったり、暑い日が続くと胃腸の調子が悪くなったり。初夏は、体の調子もくずしがち。
国際中医薬膳師の資格を持ち、和食薬膳と発酵食を伝える山田奈美さんを訪ね、初夏をすこやかに過ごすための食事と暮らしの知恵を教えてもらいました。

築90年の古民家で暮らし、畑仕事も行う山田さん。自然と共生し、体の声に耳を傾けながら家族の食事をていねいにつくる日々
「まずは自分の体の特徴を知るといいですよ。たとえば、むくみやすい体質なら、水分を出す食材を。暑がりの人は、熱を冷ますものを食べると、自然と整います」

体調と気分に合わせて、漢方茶を飲むのが山田奈美さんの日課。この日は、血のめぐりをよくするよもぎと、心を落ち着けるカモミールをブレンド。塩麹を少し加え、ミネラルを補給。味にもぐっと深みが出る
旬の食材を味方につけて、体の内側からケアしていく
薬膳とは、中医学をベースにした食養生のこと。不調へのアプローチも対症療法ではなく、食事で体全体を整えていきます。
「春夏秋冬、季節によって体に変化がおとずれますが、それを和らげる働きを持つのが、旬の食材です。たとえば暑さで体がほてったら、みずみずしい夏野菜で水分を補給する。氷を入れた飲み物よりも、胃腸を冷やすことなく、穏やかにクールダウンできます」

台所の片隅には、手づくりの発酵食品がずらり。しょうゆ麹、ひしお、塩麹などは料理の味に複雑みを出し、消化を促す
では夏野菜だけをとりつづければいいかというと、それでは体が冷えて新たな不調の原因に。熱を冷ます食材と一緒に、青じそなどの体を温める薬味をとることでバランスをとることが大切だそう。
薬膳といっても、ベースはいつもの和食で大丈夫、と語る山田さん。
「高温多湿の日本で食べられてきた和食を見直すと、素材合わせや調理法など、薬膳の観点からも理にかなったものばかりなんです」
その時季の食べ物がもつ効果を知り、少しずつ取り入れていく。続けることで体も心も安定します。
「和食の基本調味料は、味噌やしょうゆなど発酵食品が中心。発酵食品には、消化を助け、新たな有効成分がつくられるなどのメリットがあります。調味料も、できるだけ伝統製法の自然なものを選んでくださいね」
* * *
<料理/山田奈美 撮影/有賀 傑 構成・文/河合知子>
山田奈美(やまだ・なみ)
「食べごと研究所」主宰。薬膳・発酵 料理家、食養研究家、国際中医薬膳師。東京薬膳研究所の武鈴子氏に師事し、薬膳理論、食養生について学ぶ。雑誌やwebなどで薬膳や発酵食のレシピを製作するほか、神奈川県葉山町のアトリエ「古家1681」にて、和薬膳教室や発酵教室などを開催。日本の食文化を継承する活動を行っている。『かんたんでおいしい砂糖なしおやつ』(小学館)、『からだが整う一汁一菜』(主婦と生活社)、『二十四節気を愉しむ季節の保存食』(マイナビ)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです