• 日本とデンマークを行き来しながら、ヨーロッパの手仕事の魅力を伝えてきたユキ・パリスさん。「昨日より今日、今日よりも明日の自分が、少しでもいい人間であるように」と、自分を磨きつづけているユキさんに、暮らしのなかで大切にしていることを聞きました。
    (『天然生活』2024年5月号掲載)

    暮らしで大切にしていること 01
    ものからエネルギーをもらう

    「人間がほかの動物と違うところは、自分の『思い』をかたちにできること。力がある人がつくったもの、真摯な思いでつくられたものからは、喜びとエネルギーをもらえます」とユキさん。

    いいものは手にすると「なぜこの形か」「なぜこの素材や色を選んだのか」と想像をかき立てられ、つくり手への敬意が自然と生まれます。

    とくに時代の波にもまれつつも残ってきたアンティークやヴィンテージには、新しいものにはない力強さが宿ります。

    「安くてつまらないものを買うくらいなら、数は少なくともいいものを。確実に生きる力をもらえますから」

    画像: 黒のシェードのそばに、光をテーマにした花器やオブジェを配置。高低差をつけ立体的に見せることで、ものがより美しく見えるように工夫を

    黒のシェードのそばに、光をテーマにした花器やオブジェを配置。高低差をつけ立体的に見せることで、ものがより美しく見えるように工夫を

    暮らしで大切にしていること 02
    プレゼントは私らしく包む

    日本とデンマークを行き来している生活で、仕事柄プレゼントを贈る機会も多いそう。

    ヨーロッパの方に贈るときは、京都の骨董店で見つけた和綴じ本の紙と真田紐(茶道具や器などの木箱にかける、平たい織ひものこと)で。

    逆に日本の方に贈るときは、ヨーロッパの紙屋で購入したペーパーでラッピングします。

    「京都では、かつてはふすまの下に張られていたような手漉き紙の本が、本当に安く手に入ります。『何を』も考えますが、『どう』贈るかが大事。包みに自分らしいひと工夫を加えれば、贈る相手の記憶にも残るようです」

    画像: ユキさん手持ちの真田紐と和綴じ本。モダンな色合わせの真田紐は、どこか北欧の織物にも通じるデザイン。手漉き紙は風合いも格別

    ユキさん手持ちの真田紐と和綴じ本。モダンな色合わせの真田紐は、どこか北欧の織物にも通じるデザイン。手漉き紙は風合いも格別

    暮らしで大切にしていること 03
    緑のある暮らし

    心がざわざわするときや不安定に感じるときは、緑を眺めるよう心がけているというユキさん。

    「光は心のごちそうですが、緑は目のごちそう。植物を眺めていると、目にも心にも滋養になると感じます」

    食事をとるテーブルの席は、窓から緑が見える位置を選び、お客さまを家に招いたときも、やはり眺めのいい席をおすすめするそう。

    花屋さんに足を運ぶのも楽しみで、数年前からは友人のすすめで、インテリアにていねいにつくられた造花も取り入れるようにしました。

    久しぶりに戻った自宅では、花が目に入るだけでもほっとするとか。

    画像: デンマークの自宅のキッチンの窓辺。長く家を空けることも多いので、乾燥に強い植物を数点。窓からは庭の緑が眺められるのがいやし

    デンマークの自宅のキッチンの窓辺。長く家を空けることも多いので、乾燥に強い植物を数点。窓からは庭の緑が眺められるのがいやし

    暮らしで大切にしていること 04
    “調和”を大切にする

    「若いころはそれほど気にしなかったけれど、服やものでも、やはりこれにはこれが合う、この組み合わせが落ち着くということがありませんか?」

    それはもの同士の「格」がそろっていたり、ものの持つ雰囲気が似ていたり。

    ちぐはぐなものがひとつでも混じっていると、不協和音を聴いているように、どうにも心が落ち着かない。心の安定のために、もの選びでも「調和」を意識しているといいます。

    「自分らしさ、自分のスタイルをつくっていくときに、この『調和』の感覚が重要。どんなものに落ち着きを覚えるかを見極めることが大切ですね」

    画像: A・アアルトがデザインしたトレイや「ロイヤルコペンハーゲン」の小鉢、蒔絵の硯箱など時代も国も違うものがテーブルの上で調和している

    A・アアルトがデザインしたトレイや「ロイヤルコペンハーゲン」の小鉢、蒔絵の硯箱など時代も国も違うものがテーブルの上で調和している

    暮らしで大切にしていること 05
    「浦島太郎」にならない

    数年にわたるコロナ禍によって、社会の空気や価値観が確実に変化したと感じているユキさん。

    それなのに従来の固定観念にしばられ、考えが凝り固まっている人も多いと感じているそう。

    「世の中のいさかいごとのほとんどは、自分の考えを他人に押しつけることから生まれると思いませんか。新しい考えを学ぶ謙虚な姿勢は、いつでももちつづけなくてはと思っています」

    ネットで海外の報道をチェックしたり、日本の若手論客のユーチューブなどを積極的に見たりしているというユキさん。常にアンテナを張り、思考のアップデートを心掛けています。

    暮らしで大切にしていること 06
    健康のための相棒

    日頃から「体は食べるものでできている」と考え、できるだけきちんとしたものを口にするように。

    体にいい保存食もいくつか手づくりしています。

    塩レモンやしょうがスライスをお湯とはちみつで割って飲んだり、発酵食品のザワークラウトを食事に取り入れたり。

    玉ねぎの皮はほかの野菜くずと合わせ、ベジブロスを仕込みます。

    「それから結婚以来、ノルウェー産の肝油も飲みつづけているんですよ。おかげさまで病院に行って検査してもらうと数値も問題なく、お医者さまからは『この日常を続けるように』と言われました」

    画像: 右からザワークラウト、ベジブロス用に取ってある玉ねぎの皮、手前がりんご酢に漬けたしょうがのスライス、奥の大瓶が塩レモン

    右からザワークラウト、ベジブロス用に取ってある玉ねぎの皮、手前がりんご酢に漬けたしょうがのスライス、奥の大瓶が塩レモン

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    〈撮影/Anders Bøggild 取材・文/田中のり子〉

    ユキ・パリス
    1945年京都生まれ。70年の大阪万博勤務後、結婚を機に渡欧。北欧を中心にさまざまな展覧会の企画、監修を手掛ける。2002年京都にミュージアムショップ「ユキ・パリス コレクション」をオープン。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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