移住生活のスタートは“仮住まい”から
北海道と千葉の2拠点生活は、どちらも仮住まいからはじまりました。2024年の11月の終わりに東京の団地を出て、荷物は北海道へ。
たかだか50㎡強の家から出たダンボールは70箱もあった…! でも、新しい家の工事はまだはじまったばかりで住める状態ではないので、とりあえず家の隣にある倉庫に運び入れてもらうことに。
工事中、打ち合わせのために北海道に滞在するときは、移住者住宅を借りました。

快適だった「移住者住宅」
長沼町は、移住者の多い町。やはり空港が近いことが鍵になっているようです。
町でも移住したい方の誘致に力を入れていて、その施策のひとつとして町が運営している移住者用の住宅があって、この時期はそこに2週間ほど滞在しました。

広さも十分な移住者住宅。車がなくても暮らせる便利な立地にあり、助かりました
建物は古いものの、あたたかく快適。広くて、ゆうに4人は住めそうです。布団はレンタルでき、調理器具など必要なものは一式揃っているので、実際に暮らす体験ができます。
こんな住宅は近隣の市町村でもあったりする様子なので、移住を考えている人は調べてみるとよさそうです。
わたしは既に移住も家も決めてしまっていましたが、こちらに滞在する間に工事の打ち合わせをして、車を納車してもらい、またいちばんの懸念だった除雪の手配をするなど、実際に暮らすための支度をしていきました。

最初にしたかったこと
それまで長沼と東京を行ったり来たりしながら、毎回楽しみにしていたこと。それは、スーパーをパトロールすること。長沼町は農業がとても盛んな町ですが、さらに、すごいスーパーがありました。
見た目はいたって普通なのだけれど、魚の品ぞろえがものすごい。
「『グローブ』の魚すごいよ、毎日見に行きたい」と家を譲ってくれたカール夫妻が教えてくれてから、わたしも打ち合わせで長沼に行くたびに欠かさず売り場を見に行くようになりました。
にしん、八角、ソイ、ハタハタ、カワハギ、かれいにつぶ貝、などなどなど…。カニの時期は、冷凍していないカニが常時数種類。どれも安くておいしそう。
旅行中は見るだけで買えないから、引っ越して料理できる日が待ち遠しかったのです。

町役場前のスーパー『グローブ』の圧巻の品ぞろえ

暮らす場所を決める時、判断の材料になることは人によって違いますね。
私の料理はほとんど素材任せのシンプルなものばかり。だから、新鮮な野菜を買える場所があることは、これまでもとても大切にしてきたことでした。
欲を言えば、いいお魚屋さんがあったらいいなぁ。なんて思っていたら、このスーパーと、もうひとつとっておきのお店が。

こちらは魚の仲卸をやっていらっしゃるご夫婦が営むお店「タヤマグロ」。店名のとおりマグロをはじめ、その日の仕入れで質のよい魚介類がちいさなお店にぎゅっと並びます。
タヤマグロでマグロの赤身とたち(タラの白子)、グローブで買った魚を煮て、ビールと日本酒で酔っぱらった、うれしい長沼初日になりました。

移住初日のごはん
厳しい寒さならではの、食べものの楽しみ
それにしても、ひさしぶりに北海道で過ごす冬の寒さにはびっくり。特に雪が降る前の寒さは骨まで沁みるよう。
12月の北海道は16時には真っ暗で、帰宅して現場で冷えたからだをお風呂であたためて、それからごはんを作る。
雪が降る前に収穫された野菜を玄関にごろごろと並べて、毎日それで何かしらの汁物ばかり作っていました。


かじか汁

たらのチャウダー
長い冬を経て、北海道に春が来るのは5月のこと。最近やっとあたたかくなって、おいしいアスパラを農家さんから直接いただいたり、おいしいパン屋さんに出会ったり。
住む場所が変わると、食べるものが変わる。それは自然で楽しいこと。これから行動範囲をすこしずつ伸ばして、お気に入りのお店を開拓していくのがとても楽しみです。

撮影/伊藤徹也
藤原 奈緒(ふじわら・なお)
料理家、エッセイスト。“料理は自分の手で自分を幸せにできるツール”という考えのもと、商品開発やディレクション、レシピ提案、教室などを手がける。「あたらしい日常料理 ふじわら」主宰。考案したびん詰め調味料が話題となり、さまざまな媒体で紹介される。共著に「機嫌よくいられる台所」(家の光協会)がある。
インスタグラム:@nichijyoryori_fujiwara
webサイト:https://nichijyoryori.com/
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