• 美しき鉱物の魅力を語りたい……。天然生活編集部の鉱物好きなふたりが、自慢の鉱物コレクションを持ち寄りました。今回は、先日開かれた鉱物のビッグイベント「ミネラルフェア」で入手したキューブ型の結晶構造が面白い「フローライト(蛍石)」と、入手から10年以上経ってもなお虹色に光り輝く「ラブラドライト」をご紹介します。

    イベント開始直後から割引されていた、黄色いフローライトと運命的な出会い

    菅沼 では、川添さんの新しいコレクションを見せていただきましょう。

    川添 はい。今日ご紹介するのは「フローライト(蛍石:ほたるいし)」です。

    菅沼 フローライトというと、緑色や紫色のイメージがありますが、黄色いものもあるんですね。

    川添 やっぱりそう思いますか? 私も同じような印象を持っていたので、面白いな~と思って購入しました。

    菅沼 黄色い鉱物って珍しい気がします。最近になってたくさん発掘されたのですかね?

    川添 いわれてみると、黄色い鉱物は珍しいかもしれませんね。たくさん採れたかどうかは分かりませんが、今回のミネラルフェアでは、黄色いフローライトを売っている業者さんが結構いました。

    菅沼 フローライトって世界中いろいろな場所で採れる鉱物ですよね。

    川添 確かに図鑑にはそう書いてありますね。ちなみに、私が買ったのはスペイン産で、ほかにも「北京周辺で採れたもの」と教えてくれた台湾からの業者さんもいました。いろいろな場所で採れるみたいですね。

    画像: この立方体の結晶構造がよく表れている姿に惹かれました

    この立方体の結晶構造がよく表れている姿に惹かれました

    菅沼 価格も比較的お手頃ですよね。

    川添 そうですね。フローライトは、鉄の製造過程で硫黄炉の溶剤として広く利用されていて、希少性はあまり高くないようです。

    ブラックライト(UVライト)を当てると発光する「蛍光現象」があるみたいですが、今日は持っていないのでお見せできないのが残念です。

    菅沼 蛍光現象から「蛍光」という名前の由来にもなっているのだとか。

    川添 図鑑によると、フローライトの代表的な色は緑色薄紫色で、稀に黄色ピンク色などもあるそうです。

    菅沼 先ほどお話したミュージアムにもフローライトがたくさんありましたね。ブルーのフローライトがとてもきれいで感動しました!今回、この石を選んだのは、何が決め手だったんですか?

    ミネラルフェア初日、掘り出し物を求めて(仕事です!)

    川添 実は私、「第38回東京国際ミネラルフェア」には初日のお昼ぐらいに行ったんです。

    菅沼 気合い入ってますね!

    川添 取材ですから……! それで、私が会場に入ったのが、まだ開始2時間ぐらいしかたっていない時間だったのですが、このフローライトを売っていた、白人のヒッピーみたいなおじさんのお店は、もう割引販売を始めていたんですよ。

    菅沼 開始2時間でセール! 思い切りがいいですね。笑 「¥6000」というシールが貼られていますが、ここから割引に?

    画像: これが売られていた状態。鉱物名や産地が書かれた紙は、その場で店員が書いてくれたもの

    これが売られていた状態。鉱物名や産地が書かれた紙は、その場で店員が書いてくれたもの

    川添 20%オフでした。ひと通りすべてのブースを見て回った結果、大きさや形の面白さは、ほかのブースのもっと高いフローライトと遜色なかったので、立方体の結晶構造がよく表れているこれを選びました。

    菅沼 いいお買い物ができてよかったですね! 説明書も手づくり感があってなんか素朴ですね。

    川添 説明書は、私がフローライトを選んでいるときに、おじさんがその場で書いて切っていた紙ですからね。石の台座はグルーガンで適当に接着されているだけでした。

    画像: グルーガンで台座に接着されいた裏部分。母岩らしきものと、白い鉱物が付着している

    グルーガンで台座に接着されいた裏部分。母岩らしきものと、白い鉱物が付着している

    菅沼 おおらかですね!笑

    川添 そのおおらかさがお手頃価格の秘訣なのかもしれませんね。私、こういう適当な感じは嫌いじゃないんです。

    色彩の不思議――フローライトに隠された秘密

    菅沼 このフローライト、よく見ると端っこが紫になっていませんか?

    川添 ホントですね。ルーペで拡大して見ると、ハッキリ紫色に見えますね。

    画像: よく見ると、端が少し紫色に!

    よく見ると、端が少し紫色に!

    菅沼 色の違いは中に含まれる成分が影響していそうですね。

    川添 そうみたいですね。AIによると……、緑色は微量の鉄イオン、紫は放射線、青は希土類元素、黄色は有機化合物や鉄の酸化物、ピンク色も放射線や鉄イオンの影響によるものだそうです。

    画像: 紫の部分を拡大。ここに放射線が当たっていたということなのでしょうか?

    紫の部分を拡大。ここに放射線が当たっていたということなのでしょうか?

    菅沼 へー! 面白いですね。フローライトは美しいだけでなく、産業にも役立っていると聞きました。

    川添 はい。ガラスは光を通したり屈折させたりすると、光が七色に分かれる現象がありますが、フローライトはその分散が少ないので、高級レンズや半導体をつくる装置のレンズに利用されているそうです。

    菅沼 そうなんですね!

    川添 私、天体観測も好きなんですが、フローライトを使った天体望遠鏡は恐ろしく高価で、憧れです。

    菅沼 フローライトのレンズは、ガラスのレンズと何が違うんですか?

    川添 ガラスのレンズは光の屈折で色が分かれてしまうので、明るい惑星を見ると、星の周りに紫色でボヤッと覆われて見えるのですが、フローライトのレンズを使うとそれがなく、よりくっきり見えるとされているんですよ。

    菅沼 それは気になりますね!

    川添 日本でも昔はフローライトがたくさん採れていましたが、1970年代に鉱脈が枯渇してしまったため、いまは日本産のフローライトは手に入りにくいそうです。

    菅沼 蛍石という名前も趣がありますね。

    川添 そうですね。今回買ったフローライトは立方体の形が綺麗に出ていて、ルーペで見ると虹色に輝く部分も見えます。写真には残念ながら撮れませんでしたが、ルーペでの観察はとても楽しいですね。

    画像: 拡大して見ると劈開の様子もよく見えます。表面の黒い物質は何なのでしょう?

    拡大して見ると劈開の様子もよく見えます。表面の黒い物質は何なのでしょう?

    菅沼 いま、ひそかにネットでフローライトを検索して見ていたのですが、水色や紫が混じり合った「エンジェルフェザーフローライト」というものがあるようで、とてもきれいで驚きました!

    菅沼 とくに「ナミビア産フローライト」はカラフルな色が混じり合ったローマングラスみたいでめちゃくちゃきれいですね!

    川添 確かに! 次回のミネラルフェアの目標ができた気がします!

    菅沼 私も欲しいです!

    画像: 実は今回、こんな「パイライト(黄鉄鉱)」も買いました。詳しくは次回以降でご紹介予定です

    実は今回、こんな「パイライト(黄鉄鉱)」も買いました。詳しくは次回以降でご紹介予定です

    <撮影/星 亘、太田菜津美、菅沼美佳 参考文献/『楽しい鉱物学』『楽しい鉱物図鑑』(ともに、堀 秀道・著、草思社・刊)、『岩石・鉱物・化石 DVDつき(小学館の図鑑NEO 18)』(荻谷 宏、門馬綱一、大路樹生・監修、小学館・刊)>



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