虹色に輝くラブラドライト、その魅力と謎

川添 次に、菅沼さんの石を見せてもらえますか?
菅沼 はい、私は今回「ラブラドライト」という石を持ってきました。
和名を「曹灰長石(そうかいちょうせき)」というそうです。
川添 ほぉ、どんな石なんでしょうか?
菅沼 「曹長石」と「灰長石」の中間的な成分を持つため、「曹灰長石」と呼ばれているようです。面白いのが、曹灰長石はとても美しい石なのですが、曹長石も灰長石もとても地味な石なんです。
川添 どっちも白とかグレーがベースになっている、どこにでもある石みたいな……。

確かに、光り輝いている部分以外は地味な色をしています
菅沼 そうなんです。でも、「曹灰長石」は、ご覧のとおりとても美しくて。
青や緑色など、オーロラのような輝きを放つんです。
川添 なんで地味な石の中間がこんなにきれいな色になるのか。不思議ですね。
菅沼 この独特の光沢を「ラブラドレッセンス」というらしいのですが、これは、曹長石と灰長石が層状に規則正しく並んでいるところに光が当たるとこのような輝きが出現するようです。
川添 そっか!「中間」というのは中間の性質の鉱物という意味ではなくて、ふたつの鉱物が混じり合っている、ということなんですね。
菅沼 はい。よく見ると層になっている線が見えますよね。
川添 なるほどー。光の回折現象が起きているんですね。もともとは地味な石のはずなのに、不思議ですね。

よく見ると、斜めに線がたくさん入っていて、層状になっていることが分かります
菅沼 オーロラのようにも、宇宙からみた地球のようにも見えますよね。
これらの色も、やはり石の中に含む成分によるものらしく、ナトリウムが多いと青色に、カルシウムが多いと灰色になるそうです。
川添 ナトリウム、血圧が上がりそうです……。
菅沼 食べないので大丈夫です。

まるで手のひらサイズの地球のよう。きれいです…!
80円の奇跡! 小さなラブラドライトの輝き
川添 そうそう、「ミネラルマルシェTOKYOミュージアム」で、編集部員の太田さんが80円で買った石も「ラブラドライト」でしたね。
菅沼 そうなんです。小さいけれど、しっかりとブルーの輝きが見えますよね。

左の方に青い輝きが見えます
川添 80円とは思えない美しさですね!
菅沼 光が当たるとキラキラと輝いて、本当にきれいです。
川添 ところで、菅沼さんのラブラドライトはどこで買ったのですか?
菅沼 いや、それが思い出せないんです。随分昔に買ったもので……。
ちなみに、いま付けている指輪もラブラドライトです。美しい石なので、このようにアクセサリーに使われることも多いですね。

青味が美しいラブラドライトの指輪
川添 へえ~。こちらはやや青味が強い感じですね。ナトリウムが多めなのでしょうか?
話は変わりますが、ラブラドライトの起源を調べると、カナダのラブラドル半島で発見されたのだそうですね。
菅沼 犬の「ラブラドールレトリバー」と同じ場所が起源のようです。石と犬、ふたつの発祥の地になるとは、すごい場所ですね。
編集部の“推し石”大集合! あなたの心をつかむ一石は?

菅沼 私、この連載をやっていて、だんだんと気づいてきたことがあるんです。
川添 なんですか?
菅沼 自分の好みの石がなんとなく分かってきました。私は、ラブラドライトのような、いろいろな輝きを放つ石に惹かれる傾向があるようです。川添さんは結晶の形ですよね。
川添 完全にそうですね。ほぼ形しか見ていないかもしれません。

星(カメラマン) 石って結構面白いですねー。自分も欲しくなりました!
川添 星さんはどんな石が好きなんですか?
星 カリブ海の国、ドミニカの海の色の宝石といわれる……!
菅沼 「ラリマー」ですか?
星 そう、それです!
菅沼 水色のきれいな石ですよね。私も好きです!
星 そうなんですよー。そういえば、留学していたニュージーランドから帰国するときに、「またニュージーランドに戻ってこれるように」と、グリーンストーンのお守りをもらったんです!
川添 それ、次の撮影で紹介させてください!
星 あっ、でもなくしちゃったんですよ! アハハー。
川添・菅沼 エェッ……。
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<撮影/星 亘、太田菜津美、菅沼美佳 参考文献/『楽しい鉱物学』『楽しい鉱物図鑑』(ともに、堀 秀道・著、草思社・刊)、『岩石・鉱物・化石 DVDつき(小学館の図鑑NEO 18)』(荻谷 宏、門馬綱一、大路樹生・監修、小学館・刊)>