(『天然生活』2024年5月号掲載)
朝のちょっとした習慣で、自己肯定感が上がる!
自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れること。
悪い面も含めて自分を好きになる、自分が自分であっても大丈夫という感覚で、幸せな人生を歩むうえで重要なことが、心理学の研究でわかっています。
そんな、自己肯定感を高めてくれる、朝のセルフケアの方法を、桜美林大学教授で臨床発達心理士の山口 創先生に教えていただきました。
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▼幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」とは? 前回のお話はこちら
目覚めた直後に布団の中で行う「朝のセルフケア」
目覚めた直後から減るオキシトシンを、分泌させるセルフケアです。
まどろみながら幸せを感じることで、一日のあり方が変わります。
1.やわらかいものに触れる

ストレスがたまっているときや、気持ちが不安定なときはとくに、やわらかい素材の感触を味わいましょう。
自律神経の副交感神経(リラックスの神経)が優位になり、心もやわらかくなります。
気持ちよさを感じるための神経線維が反応するように、ゆっくり触れることが大切。
安心感が高まります。
1 前日の夜、寝る前に枕元にやわらかくて肌触りのよいもの(毛足の長いタオルや毛布、枕カバー、布切れ、ぬいぐるみなど)を置く。
2 起きたら1を、手のひらや手の甲でゆっくりとなでる。顔に当ててもよい。
3 やわらかいものの感覚に意識を集中させながら、1分ほど触れる。触れる前と比べて変化が小さい場合は、別のもので試す。
2.自分で自分をハグする

忙しい毎日で、私たちの意識はつい外側に向きがち。
自分で自分を抱きしめていたわる「セルフハグ」は、体の内側へと意識を向け、安心感とリラックスを与えてくれます。
ぎゅっと抱きしめたりやさしくなでたり。自分の体と対話しながら適度な圧をかけると、「私が私であること」を思い出させてくれます。
1 目を閉じてリラックスした状態で、両手を胸のまんなかに当てる。
2 しばらく呼吸を感じる。
3 右手を左の肩に、左手を右の肩に置き、両手をクロスさせて、自分を抱きしめる。
4 深呼吸を数回して、両肩が呼吸とともにゆらぐのを感じる。
5 両手の温かさで自分自身を抱きしめるように、約2分間、抱き寄せる。
3.息を数える

心を整えるために、自分の息を数えながら呼吸する「数息観(すそくかん)」。
仏教で坐禅をする際に使われる修行法ですが、日常生活のなかで心身を整えたいときにも有効です。
呼吸は心の状態と直結。心が乱れると自律神経の働きで呼吸も乱れ、逆に呼吸を整えれば心も整います。
目を軽く閉じてやると、より集中できます。
1 鼻から息を吸う。吸うときに「ひとー」と、ゆっくり心の中で唱える。
2 口から息を吐きながら「つー」と、心の中で唱える。
3 次の息を吸うときは「ふたー」、吐きながら「つー」と心の中で唱える。
4 10まで数えたら、また1から数える。心が穏やかになるまで数回繰り返す。
*途中で数えてきた数字を忘れてしまったら、深く考えずに1から始める。
次回は「起きたらすぐに行う、朝のセルフケア」をご紹介します。どうぞお楽しみに!
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▼「自己肯定感を高める、朝のセルフケア」記事一覧
〈監修/山口 創 イラスト/ヤマグチカヨ 取材・文/堺 あゆみ〉
山口 創(やまぐち・はじめ)
桜美林大学教授。臨床発達心理士。健康心理学、身体心理学を専攻とし、人と人が触れ合うことによって分泌される幸せホルモン・オキシトシンと皮膚の関係を探究。皮膚・触れることをテーマに、子育て、介護、看護など、さまざまな人を対象に研究や講演活動を行う。著書多数。近著に『最良の身体を取り戻す』(さくら舎)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです