(『天然生活』2024年5月号掲載)
朝食や朝食後に行う「朝のセルフケア」
桜美林大学教授で臨床発達心理士の山口 創先生に、朝食や朝食後に行う「朝のセルフケア」を教わりました。
朝食は五感を刺激する絶好の機会。
いつも何かに追われている心を、いまこの瞬間に留める手助けとなる、五感の楽しみ方を紹介します。
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▼自己肯定感を高める「朝のセルフケア」とは? 最初のお話はこちら
1.ゆっくりと味わって食べる

目で見て、香りをかぎ、口に運び、ゆっくりかんで味わう。
五感を研ぎ澄ませながら食べる朝食は、瞑想と同じ効果があります(マインドフル・イーティング)。
また、口腔粘膜に食べ物が接触すると、それが脳に届いてオキシトシンが分泌。
満腹感はもちろん、幸福感を感じやすくなり、自己肯定感を高めてくれます。
● 家族など親しい人と一緒に食事をすると、オキシトシンが出て満腹感を感じやすくなる。
● ゆっくりと味わって食べると、口腔粘膜が刺激されて満腹感を感じやすくなる。
● ジャムやココア、バナナ、チョコレートなど、甘いものを食べると幸福感が高まる。
● 食感を刺激するガムや、食物繊維が豊富なごぼうや大根、キャベツなどは、オキシトシンを増やす。
2.香りを楽しんで飲む

五感のなかでも、嗅覚は感情に直結しています。
においをかぐとその情報が、脳の最も深いところにある大脳辺縁系に届き、感情や記憶に働きかけるのです。
自分が「いい香りだな」と思える飲み物なら何でも大丈夫。
好きな飲み物を、香りを楽しみながら味わってみましょう。
短時間でも十分なリラックス効果があります。
● コーヒーやハーブティー、紅茶、緑茶、ココアなど、好きな飲みものの香りを楽しみながら飲む。
● いつも同じ香りではなく、変化のバリエーションをつけるのがおすすめ。
3.目をつぶって歯みがきをする

テレビを見ながら、今日の予定の段取りを考えながらの「ながらみがき」はNGです。
目をつぶって「いま、右の奥歯にブラシの先が当たってるな」などと、意識を向けながらみがいてみましょう。
「いま、ここ」に意識を留めるマインドフルネスの練習になります。
集中してみがくことで、みがき残しがなくなるメリットも。
● 目をつぶり、ブラシが歯茎に当たる感覚を意識しながらみがく。
4.花や観葉植物を見る

自然のものを見ることで、心拍や血圧が下がり、心身をゆるめる効果があることが、色彩心理学の研究でもわかっています。
大自然を毎朝眺めることはできなくても、家の中で観葉植物や花を眺めるだけで、カラーセラピーの効果はあります。
生花が難しければ、自然のポスターや絵画でも。屋外では空や木々の緑を積極的に見て。
● 切花や観葉植物をテーブルに飾り、眺める。
● いつも同じものを見ていると新鮮味がなくなるので、ときどき変えて。
● 意識して眺めることで、色合いの変化や成長に気づくように。
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▼「自己肯定感を高める、朝のセルフケア」記事一覧
〈監修/山口 創 イラスト/ヤマグチカヨ 取材・文/堺 あゆみ〉
山口 創(やまぐち・はじめ)
桜美林大学教授。臨床発達心理士。健康心理学、身体心理学を専攻とし、人と人が触れ合うことによって分泌される幸せホルモン・オキシトシンと皮膚の関係を探究。皮膚・触れることをテーマに、子育て、介護、看護など、さまざまな人を対象に研究や講演活動を行う。著書多数。近著に『最良の身体を取り戻す』(さくら舎)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです