(『天然生活』2021年9月号掲載)
料理の気配を背後に感じ
「在宅勤務歴20年以上で、筋金入りのリモートワーカー」と胸を張るオガワナホさん。
社会人になってからずっと、家でイラストを描く仕事をしてきました。バランスをとりながら、仕事と暮らしを上手に両立。
とくに、いまの家に引っ越してきてからは、「共存化」はよりスムーズになったかもと話します。
それは、ワークスペースと台所が隣り合う、家のレイアウトによるもので......。

コンロは壁側に、シンクはアイランドキッチンにあり、ふたり以上での作業もしやすく、来客時にも便利
「家の中心に台所がある間取りなのですが、そのすぐ脇に仕事机を置きました。デスクは前の家のときにデザイナーの友人につくってもらったオリジナル。幅が180cmほどあるかなりロングサイズなんですが偶然、台所の横がぴったり。外の緑が見える窓際で、この家の一等地なんです」

白い鍋が文中に登場する「大同電鍋」。火加減を細かくチェックしなくていいので、「ながら調理」に最適
期せずして始まった仕事と台所の同居生活。
アイデアに行き詰まったとき、絵の具が乾くのを待つ間などに、すっと台所に行き、お茶をいれたり、夕飯の仕込みをしたり.....。
台所作業は、イラストとはちがう脳を使い、よい気分転換になるのです。家のこととはいえ「仕事」ではあるから、サボりではないという、自分へのエクスキューズにも。

台所のすぐそばには大きな窓。まな板などの木製品を干すのにちょうどいい
最近は楽しい道具を手に入れ、イラストと台所仕事の同時進行もますますスムーズに。
「台湾の友人から送ってもらった電気鍋が、いまわが家でアツいのです。ボタンはひとつだけのシンプルなつくりで、炊飯も煮込みも、基本は蒸すという調理法。鍋が二重になっていて、外釜に水を入れて内釜を入れてふたをしてスイッチを押すだけ。水が蒸発してなくなると、自動でスイッチが切れるから、仕事に集中して焦がしてしまうという心配もないんです」
鍋の中で煮込みをしながら、外釜の上にせいろを乗せて蒸しものをするなど、2品同時調理もできるそうで、忙しいオガワさんの支え。

長いデスクは左右でスペースを分け、右ではパソコン作業、左では手描き作業を行い、今後は娘さんの勉強スペースに
料理をしながらアイデアを練り、イラストを描きながら晩のスープをつくる。
仕事と暮らしに境界線はなく、両者が平らにつながっているオガワさんの日々。
「娘が小学生になったら、机の半分は明け渡すつもり」
台所と机との行き来のなかに、新たな展開が生まれそうです。
<撮影/近藤沙菜 取材・文/鈴木麻子>

オガワナホ(おがわ・なほ)
NYで絵画を学んだあと、アメリカ、台湾、香港などで活動。『わくわく台北さん
ぽ』(誠文堂新光社)、絵本『ナナとミミはぶかぶかひめ』(偕成社)などの著書がある。インスタグラム@nahoogawa_illustration
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです