60歳になったらしたいと思っていたメンテナンス
60歳になったら──。そのタイミングでいくつかのメンテナンスを予定していました。そのひとつが歯の治療です。いままでも歯科医院には定期的に通っていたのですが、この先、10年、15年を想定して、診てもらえる病院を、とここ数年、探していました。
5月からあたらしい歯科医院に通院しています。歯科と言っても様々ですね。まず、それまでの病院とちがい、いくつもの選択肢があることに驚いています。治療に入る前に1時間ほど「どう進めていくか」を先生と話し合う時間もありました。

1718年創業創業、日本橋大伝馬町・江戸屋さんの天然毛の歯ブラシを愛用中
10年後、15年後を見据えて
その時間のなかで印象的だったことがあります。それは、歯の治療・メンテナンスの話しをしているのですが、それが、まるで「これからどう生きていきたいのか」を考える過程のようだったことです。
たとえば、自分の歯をどれだけ残したいか。どのような見た目にしたいか。保健適用か外か。日々の食事内容。運動の有無。治療にかける時間と情熱。そういった内容でした。
最後の「情熱」は、わたしが感じただけなのですが、基本方針として、病院まかせではく、きちんとした生活とセルフケアをするという前提があり、その上で「よくなっていく」という病院側の姿勢が見てとれました。
と言うのも、わたしの「こうしたい」をすべてやると2年ほどかかるそうです。年齢も年齢なので2年かけてやるかは「わたし次第」。日々の習慣の見直し、自宅での丁寧なケアをすれば、治療期間も内容も変わるそうです。
その都度その都度、相談しながら進める予定ですが、どちらにしても「どうしたいのか」「その意志があるのか」を、人生の残り時間とできることできないことを自分に問いながら進めていくことになりそうです。

歯科医院で勧められたヘッドがちいさな歯ブラシも併用中

ヘッドが小さいタイプ
歯の強さ、弱さは体質。検査で現状を知る
治療をスタートするに当たり、はじめての検査もしました。わたしは、こどものころから歯が弱いのですが、それが体質だとわかりました。よかったのは、その他の部分は比較的良好だったこと。あとは、体にいいと言われているものでも、歯にダメージがある食べ物、習慣も教えてくれました。「甘いもの」がそれほどわるくなかったこともよかったことのひとつです。
いままで病院へはほとんど行っていなかったのですが、急に病院通いがはじまりました。60歳になったら「白内障の手術を」と考えていたのですが、歯の治療がある程度終わってからのほうがいいというアドバイスもあり、目の手術は、来年以降ですね。今後は、歯科、眼科、プラス以前書いた甲状腺の経過観察を半年に1度。
少しずつ、順番に。治療費は確実に増えていきます
年齢を重ねるというのは、こういうことなのですね。亡くなった母からは「歳を重ねた時の病院の治療代を用意しておくように」と、よく、言われていました。その年齢になったいま、言葉の意味を重く受け止めています。
通いはじめた歯科医院は、並木道がつづくオフィス街の一角にあります。その並木道が、気持ちいいのです。オフィス街のなかに森のような場所もあります。家からバスで1本。天気がいい日は散歩に行くような気持ちで歯科医院へ通います。


広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所共同代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、瀬戸内を経て、2023年から再び東京在住。現在は、執筆のほか、ホテルや店舗、住宅などの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)、最新刊は『60歳からあたらしい私』(扶桑社)。インスタグラム:@yukohirose19