• 目が見えなくなっても人生を楽しむことはできる──。自分の足元に転がっている幸せを好奇心で見つけていくことが人生を楽しくしてくれると、石井健介さんは語ります。一夜にして視力を失って9年。初のエッセイ本『見えない世界で見えてきたこと』(光文社)を刊行した石井さんの前向きな人生との向き合い方からは、日々の悩みや迷いに押しつぶされずに自分らしく生きるヒントを学べそうです。

    音声読み上げソフトを駆使してSNSで仲間とつながる

    ──自分の好奇心をどんどん形にしていくのがすごいですね。そんな中でSNSを活用して、周りの人の手を借りることも多いと聞きました

    入院してすぐ、妻に頼んで僕の状況をFacebookで伝えてもらいました。そうすると、本当にたくさんの方から心配のコメントをいただいたんです。

    実は、それまで僕は「誰も自分のことなんか好きじゃないんじゃないか」とうっすら思っていたところがありました。でも、このときのコメントをきっかけに、人の気持ちや言葉をまっすぐに受け取れるようになったんです。

    目が見えなくてもiPhoneのVoice Overという読み上げ機能を使えば、SNSを通じてみんなと繋がることができる。自分の気持ちを自分の言葉で伝えられるし、僕が何かやろうとするプロセスをみんなが応援してくれます。

    画像: 文字通り“ブラインドタッチ”でテキストを入力して、読み上げ機能を使って自分の文章を確認。約7万字のエッセイ本を書き上げた

    文字通り“ブラインドタッチ”でテキストを入力して、読み上げ機能を使って自分の文章を確認。約7万字のエッセイ本を書き上げた

    たとえば、都内で行きたいところがあるとき「誰か一緒に歩いてくれませんか?」と投げかけると、「一緒に行きたい」と手を挙げてくれる人がたくさんいます。せっかくたくさんの人が協力してくれるというのだから、みんなに集まってもらって、知らない人同士をつないだりもしています。

    「石井くんが気軽に『助けて』と手を差し出してくれるから、その手をつないで力になれるのが自分もうれしい」。そんなふうにいってもらえて、「何かしてもらうだけの関係性ではない。頼っていいんだ」と思えるようになりました。

    僕がもっている障がい者手帳で受けられるサービスを上手に活用して同伴する友人も映画や美術館を楽しんでもらえたら、みんなにとってもハッピーですよね。

    ※ 前編では、突然の失明で絶望の淵に突き落とされた石井さんが、“見えない世界”で見つけた「新しい家族のかたち」についてお届けしてします。

    〈撮影/星 亘 取材・文/工藤千秋 撮影協力/BAR MEIJIU〉



    石井健介(いしい・けんすけ)
    ブラインドコミュニケーター

    1979年生まれ。アパレルやインテリア業界を経てフリーランスの営業・PRとして活動。2016年の4月、一夜にして視力を失うも、軽やかにしなやかに社会復帰。ダイアログ・イン・ザ・ダークでの勤務を経て、2021年からブラインドコミュニケーターとしての活動をスタート。さまざまな領域で活躍している。
    X:@madhatter_ken

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    見えない世界で見えてきたこと

    『見えない世界で見えてきたこと 』|石井健介(著)

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    あの日の朝、僕は目が覚めたら目が見えなくなっていた。
    36歳にして視力を失った著者による、まるで小説のような自伝エッセイ

    視力を失った僕は今、青く澄んだ闇の中に生きている。見えていたころには見えなかった、目には見えない大切なものが見えてきた。声を出して泣ききることも、人に頼って助けを求めることも、難しいことではなかったんだ。僕は生きることがずっと楽になった。



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