(『天然生活』2024年8月号掲載)
たくさん汗をかき、その気持ちよさを感じて
豊かな自然に恵まれた千葉県いすみ市。
この地で25年間、自給的生活を目指すコミュニティ「ブラウンズフィールド」を主宰してきた中島デコさんは、近年の猛暑についてこう話してくれました。
「去年は育てていた大豆が枯れるほどの暑さでした。でも夜になると暑さは和らぎます。土と緑がいかに大事かを実感しますね」

敷地内にある田んぼ。自然栽培で「イセヒカリ」という品種の米や数種類の古代米を育てている。夏は草取りに精を出す季節
十数名のスタッフと寝食をともにしながら、農作物を育て、カフェや宿泊施設を営むデコさん。
昔から夏は好きな季節だといいます。
「冬は体が縮こまりがちだけど、夏は汗をたくさんかけるから気持ちよくて。暑かったら水浴びをすればいいし、近くにある海に行って泳げばいいしね」

夏のお楽しみイベント、流しそうめん。近くの竹を切り出してそうめん台や器などを手づくりし、スタッフのみんなで囲む

古民家の茅葺き屋根は断熱性が高く、夏でも涼しいつくり
とはいえ、体をケアする工夫は欠かしません。
この季節はなるべく早朝のうちに農作業を行い、日中の暑い時間帯は休むという生活。
梅酢水、梅の酵素ジュース、甘酒アイスといった、手づくりの飲み物、食べ物も夏の元気を支えてくれます。
「冷たくて甘いものを食べたくなるけど、甘酒ならより体にやさしいでしょ。暮らしの中で、何がベターかをひとつひとつ考えていくことが大事なんじゃないかな」

自家製の梅酢を水で割った梅酢水は家で飲むほか、「熱中症対策として水筒に入れて畑に持っていきます」
体の声を聞きながら、日々、微調整を重ねて
もうひとつ、デコさんが夏に限らず1年中大事にしているのは食べすぎないようにすること、そして発酵食品をよくとること。
腸を整えることが、健康の要です。
「腸が元気だと肌もきれいになるし、気力も湧いてくるんです。あとは体を冷やさないこと。夏でもおなかを守って、冷たいものをとりすぎないようにしています。冷たいものばかり食べたり飲んだりしていると、消化力が落ちて栄養吸収も悪くなってしまうから」

甘酒は田んぼで育てた古代赤米と自家製米麹を使って手づくりしたもの
日々をすこやかにすごすための基盤をしっかり持ちつつ、あまりストイックになりすぎない、というのもデコさんらしい考え方。
「我慢ばかりだとストレスになるから」と話します。
「どうしても冷たいものがほしくなるときもあるし、孫たちと、かき氷屋さんに行くことも。それで調子が悪くなったと感じたら、また控えればいい。体の声をきちんと聞きながら、日々微調整していけばいいと思っています」

毎年、夏用の帽子をラフィアで編んでつくるのが恒例に。「今年はどんな帽子にしようかなと考えるのが楽しくて」
〈撮影/柳原久子 取材・文/嶌 陽子〉
中島デコ(なかじま・でこ)
16歳でマクロビオティックに出合い、25歳から本格的に学び始める。1999年、千葉県いすみ市に田畑つき古民家スペース「ブラウンズフィールド」を開き、 世界各国から集まる若者たちとともに、持続可能な自給的生活を目指す。講演会や料理教室などでも活躍中。近著に『中島デコのサステナブルライフ』(PARCO出版)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです