(『天然生活』2024年9月号掲載)
老後の準備を考えつつ、年を経てもつくり続けて
ところで、斉藤さんは好きなものがたくさんあります。
庭の緑の手入れが好きで、料理が好き。そして津軽三味線が好きで、人前で演奏するほどの腕前です。
また車好きで、どこへでも運転して行くというフットワークの軽さにも驚きます。
外出して外を歩けば、ガラスに映る自分の姿を見て姿勢のチェックも怠りません。
かっこいい服をデザインする源は、自分がみずから着たいという理由が一番なのです。

2023年、有名百貨店の出店(期間限定)に際し、デニムを使った小物が欲しいとの要望でつくった手さげバッグ。好評だったことからネットでも販売中。細長く切った生地の両端の糸を抜き、ミシンで縫って下処理をほどこした。「これをバッグの編み目に1本ずつ結んだだけ。だれでもつくれますから、やってみてください」
「80歳になったの。年齢は考えない方がいいと思っているけど、そろそろ老後の準備をね……」
デッドストックのデニムを惜しみなく使って創作するのは、残したままではもったいないからといいます。
「もし、新しい生地を買って創作していたら、こういうアイデアは出なかったと思う。手元にあるものを生かして、使いきろうと思って生まれたアイデアだから」
年を経て、まさかデザイナーと呼ばれることになろうとは想像すらしていなかったと。
「ほんとに、好きなものに出合えてよかったなと思っています」

▼デザイナー・斉藤照子さんの記事はこちら
〈撮影/落合由利子 構成・文/水野恵美子〉
斉藤照子(さいとう・てるこ)
ハンドメイドの服づくりに携わってきて半世紀以上。いまは自分のつくりたいものを自由に楽しみながら創作活動中。手にするデニムシャツは約50年前、子どもにつくったもの。編み物好きでもあり、ニット作品も多く手掛ける。SAITOSHOP
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです