水晶の中に庭園が見える「ガーデンクォーツ」

川添 なんだか、疲れてきましたが、最後に菅沼さんの石を見せてください。
菅沼 今日持ってきたのは「ガーデンクォーツ」です。
透明な水晶の中に苔や岩のようなものが入り込んでいて、庭園のように見えることから「庭園水晶」とも呼ばれているそうです。
川添 最近人気ですよね。
菅沼 そうなんですね。ガーデンクォーツは、水晶が成長する過程で周囲にある鉱物を取り込んだものだそうで。
この中の緑色のモヤモヤっとしているものは、「クローライト(緑泥石)」という鉱物ではないかと思っています。
岩っぽいものも見えますね。これは「泥岩」なのかなぁと思うんですけど。

石の内側はまるで庭園のよう。ずっと見ていられます!

この角度からは、茶色い石(泥岩?)が多めに見えます

こちらの角度からは緑泥石が多めに見えます

水晶ならではの透明感もたまりません
川添 なるほどー。
菅沼 ガーデンクォーツは、数万年から数百万年という長い年月をかけて地中の深くで成長したみたいです。
水晶の成長速度や中に入る鉱物の量が変化することで、こういった模様ができるらしいですね。
石それぞれが全く違っていて、まさに自然のアートのような感じです。
川添 ガーデンクォーツといっても、ホントに多種多様ですもんね。
菅沼 名前の通り、本当に庭っぽく見えますよね。この石、庭を楽しんでいる気分になれて、ずっと見ていられるんですよ。
表面はカットされているんですが、カット面が内側の石と並行状になっていて、それもまた美しいなと思ってお迎えしました。

水晶の先端と内側の鉱物の角度が揃っているのがまた美しい……!
川添 肉眼で見ていると、緑の苔のような部分が印象的に見えたんですが、写真で見ると茶色の部分が目立って見えて不思議ですね。菅沼さんは、ルーペで石の中を見たことはありますか?
菅沼 いいえ。
川添 ぜひ見てみてください。ルーペで覗くと、また違ったふうに見えるんです。
(菅沼、ルーペを覗く)

ルーペで覗くと、内側の鉱物の様子がよく見えて、洞窟を探検しているような不思議な気分になります
菅沼 おぉー! ルーペで見ると、ダイビングしているような不思議な感覚になりますね。
川添 ですよね!
菅沼 なんだか洞窟探検しているみたいで、没入感があります。
川添 ルーペ、なかなか楽しいですよね。
菅沼 はい。これがまた数万年前の鉱物だと思うと、本当に感慨深いです。
実家の木に吊るされていたところから救出!?

お気に入りのガーデンクォーツでしたが、実家に置きっぱなしにしていたところ……
川添 このガーデンクォーツはどうやって手に入れたんですか?
菅沼 10年以上前に原宿の石屋さんで買ったような気がします。3,000円もしなかったような。
川添 人気が出る前だから安く買えたんですね。
菅沼 はい。この石、実家に置いていたんですが、何を思ったのか、母が家の前にある木に吊るしておりまして。
川添 え、外の木に!?
菅沼 そうなんですよ。クリスマスツリーのオーナメントみたいに石がぶら下がっていて、本当にびっくりしました。
川添 飾りとして吊るしていたということですか?
菅沼 はい。これまでずっと太陽の光や雨風に晒されていたと思うと恐ろしいですね。
肉眼では分からないですけど、写真で見たらかなりすり傷ができていますね……。

よく見ると水晶の表面にたくさんの傷が……
川添 家族との思い出が刻まれたということで。
菅沼 本当に、せっかく数百万年かけて育まれた鉱物に……。これも自然の流れなんでしょうね。
川添 割れなくてよかったですね。
菅沼 本当によかったです。かなり気に入っていた石だったので。
川添 もしかして、この連載がきっかけで救出されたんですか?
菅沼 そうなんです。ついこの間まで外の木にぶら下がってましたから。数年は外にいたんじゃないですかね。
今回救出されて、こんなきれいに撮っていただいて、ルーペも覗かせてもらって、今日は本当に楽しかったです!

ルーペで石の内部を探検するのは本当に楽しかったです
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<撮影/山川修一 参考文献/『楽しい鉱物学』『楽しい鉱物図鑑』(ともに、堀 秀道・著、草思社・刊)、『岩石・鉱物・化石 DVDつき(小学館の図鑑NEO 18)』(荻谷 宏、門馬綱一、大路樹生・監修、小学館・刊)>