(『天然生活』2023年9月号掲載)
日々、料理を続けるために手間ひまかけずにコツを知る
登場回数の多い定番料理は、これまでの“なんとなく”の手順や材料を見直すと、新たなおいしさに出合えます。

「すごくおいしい料理は、食べる方もエネルギーを使ってしまう。家庭料理は3日たったら忘れちゃうくらいの味がちょうどいいんです」
たとえば、甘辛味が当たり前だと思っていた豚のしょうが焼きは、あえて甘味を入れずにつくります。
「ちなみに甘辛味は、しょうゆと砂糖、さらに酒とみりんまで加える人も多いですが、みりんは、“甘味のある酒”なんです。砂糖、酒を入れているなら、みりんを入れる必要はほとんどありません」
定番料理に新たな味わいを与える第一のコツは、“調味料の種類と量を減らすこと”と、瀬尾さん。

「しょうゆは、両手にのる程度の素材に対し、大さじ1を目安にすると感覚がつかめます」
そして大切なのは、手慣れた料理こそ自己流ではなく、まずは教わった通りにつくってみること。
「今回のレシピは、むだなものを一切省いただけに、どの工程も不可欠。それぞれの作業に意味があるので、ぜひこの通りにつくってみてくださいね」
「甘くない豚のしょうが焼き」の作り方
肉はやや厚めのものを選び、たたいてやわらかに。甘味なしの味つけで、しょうがの香りを際立てます。

肉のうま味としょうがの風味を味わうひと皿。「甘味って、食べ進むうちに飽きるんです。素材の味わいを生かすなら、この味つけで」
材料(2人分)
● 豚ロース肉(しょうが焼き用、厚さ5mm程度のもの) | 4枚 |
● 薄力粉 | 小さじ2 |
● しょうが(皮付き、親指程度の大きさ) | 1片 |
〈たれ〉 | |
・酒 | 大さじ1と1/2 |
・しょうゆ | 大さじ1と1/2 |
・植物油 | 小さじ1と1/2 |
・キャベツ(せん切り) | 適量 |
・スナップえんどう(ゆでたもの) | 適量 |
・マヨネーズ | 適量 |
・こしょう | 適量 |
つくり方
1 豚肉は、包丁の先で赤身と脂肪の間の筋を切る。肉たたき、もしくはうろこ取りで、ふたまわり程度大きくなるまでよくたたき、両面に薄力粉をはたく。

肉をたたくときは、うろこ取りを使って。兼用できるなら、道具は少ない方がいい
2 フライパンを強火で十分に熱する。植物油をひいて1を並べ入れる。肉の表面に肉汁がにじんできたら裏返し、全体にかかるようにしょうがをすりおろして入れる。
3 肉の両面が焼けたら、たれの材料を混ぜ合わせて入れる。よく煮立てながら全体にからめる。
4 器にキャベツを盛り、全体にマヨネーズを細くしぼる。3とスナップえんどうを盛り、フライパンに残った焼き汁をかける。好みでこしょうをふる。
ここが大切

豚肉の表面に、うっすらと汗をかいたように肉汁が出てきたら、裏返すタイミング
<料理・スタイリング/瀬尾幸子 撮影/山川修一 取材・文/福山雅美>
瀬尾幸子(せお・ゆきこ)
手軽な素材と少ない手順・道具で、無理なくつくりつづけられる日常の料理を提案。“ラクうま”をテーマにした一連の著書は、料理初心者からベテラン主婦まで、圧倒的な支持を集めている。近著に『ささ〜っとラク麺&だーっとかけ丼170』(主婦と生活社)。YouTube「ラクうま瀬尾食堂」でも、料理のコツを惜しみなく伝授中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです