ギリシャを象徴する植物「オリーブ」
丘への道を進むと、オリーブの木がところどころに植え付けられてあり、6月はまだ緑色の小さな実をぶら下げていました。
岩がむき出しになった坂を登りきると、遠くに続くオリーブの丘や湾までが眺望でき、風が吹き抜けます。
実はこの日は、心地よいそよ風どころか突風が吹き荒れていて、山火事が心配されるほどでした。
オリーブは乾いた土地にしっかり根を下ろす植物のようです。

世界中からやってきた観光客が行き交う細い道を進み、やっとアクロポリスに到着。
見どころは語り尽くせないほどですが、アテネの街を見下ろすこの丘には、都市守護神アテナのシンボルであるオリーブの木があります。
もちろん、アテナがこの街に贈ったそのものではありませんが、古代の昔からずっとそこにいたかのように、神殿のそばに佇んでいました。
アテナが授けたオリーブを栽培することで、この土地は豊かになりました。
オリーブはギリシャを象徴する植物となり、1ユーロ硬貨にはフクロウ、三日月とともにオリーブの葉が刻まれています。

いまも街を歩けば、店先には樽いっぱいのオリーブが量り売りされていたり、オリーブオイルの種類は実に豊富。
木材を利用したカトラリーやプレート、はちみつを入れる壺などもお土産屋さんに並んでいます。
葉をハーブティーとして飲むこともできますが、ギリシャではそういった習慣はないようでした。
それにしても、オリーブには無駄にする部分がないことを改めて知りました。
〈撮影・文/石丸沙織〉
石丸沙織(いしまる・さおり)
英国メディカルハーバリスト、アロマセラピスト。イギリスでハーブ医学を学んだのち、東京、香港を経て、2011年より鹿児島県奄美大島在住。地域に根差したハーバリストとして、身近なハーブを暮らしに取り入れたケアを広めている。菓子研究家・長田佳子さんとの共著に『ハーブレッスンブック』(アノニマ・スタジオ)、訳書に『フィンランド発 ヘンリエッタの実践ハーブ療法』(フレグランスジャーナル社)がある。
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メディカルハーバリストの石丸沙織さんと菓子研究家・長田佳子さんは2018年より「herb lesson」を開催してきました。ハーブのテイスティングとそのシェアリングに時間をかけ、教科書的なハーブの知識だけではなく、それらが使う人の心身にどのように響くかを大切にしています。
ハーブティー、ブレンドの考え方、ハーブバス、チンキなどのレメディ、ハーブの風味を味わうお菓子を暮らしに取り入れてみましょう。自分の感覚を大事にする、こころとからだを癒すセルフケアの方法やアイデアをご紹介します。
ハーブとの出逢いを通して、新しい自分に出逢える一冊です。