(別冊天然生活『暮らしを育てる台所2』より)
出しっぱなしにしたくないから、定位置を考えて台所をつくりました
福岡・能古島に暮らすエッセイストの檀太郎さんと晴子さんの台所は、日々の工夫が積み重なった空間です。
出しっぱなしにしないよう器や道具の定位置を決め、用途ごとに整理。
大皿から豆皿まで取り出しやすく収められています。
棚には自家製のとうがらしオイルや梅酒、魚醤が並び、床下はワインセラーとして活用。
広々とした設計の台所は、年を重ねても工夫を加えながら心地よく使える場となっています。

台所に日々立つからこそ、太郎さんと調理台を分け、晴子さんは眺めの良い窓辺に。左手に勝手口があり、ベランダに出られる


とうがらしや月桂樹は手が届くところに引っかけて
食器類の収納
日常的に使う器はすぐ用意できるように晴子さんの調理スペースの背面収納に。
「きちきちに入っていると取り出せないから少しゆとりをもたせています」調理道具は“すりおろす道具”“混ぜる道具”というように用途でざっと分けてしまう
大皿から豆皿まで、出し入れしやすい引き出しに収納
調味料の収納
自家製のとうがらしオイルが棚にずらり。
パスタや中華など、さまざまな料理に使います。

いろんな品種のとうがらしを育ててはオイルに漬けて、味わいの違いを楽しんできました。
「それにしてもたくさんあったので、このあいだ整理したんです。ひとつひとつ味見をして辛さで分けました」

床下はワインセラーに
台所をはじめとする生活空間はフラットに並べ、ひんやりと涼しい床下はワインセラーとして活用。

自家製の梅酒やシロップもここに。ラベルにはつくった日付と分量を
キビナゴと塩で仕込んだ、魚醤も。東京にいる頃から手づくりし、ほかのものでは代用がきかない
動きやすさを考えて設計された台所

台所は、動きやすいように広々と設計しました。

けれど、「いまの私にはちょっと広いの。年をとるにつれ動線は変わっていくもの、使いながら工夫が必要ね」
食器棚や床の木材は、太郎さんが材木商をまわり選んだそう。

時を重ねて色つやが美しい。扉の奥は、エアコンで温度調節するパントリー
火を使う場所はレンガの壁に。油はねを気にせず使え、掃除の手間がかかりません。

ガス台は火力の強い業務用を太郎さん、家庭用を晴子さんが主に使う
本記事は、別冊天然生活『暮らしを育てる台所2 』(扶桑社ムック)からの抜粋です
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本書には、12軒の台所が登場します。
そのどれもに共通するのは、日々の暮らしが息づいていること。
トントントン、ザクザクザク……。いつの間にか、体に染みついた動きで料理が完成し、さっきまで、慌ただしかった気持ちが落ち着いていく。
家族や、遊びにきた友人や仲間と調理の作業をリレーしたり、味見をお願いしたり、最近あった出来事を報告し合いながら、わいわいにぎやかに料理し、台所に立つ。
支えられたり、笑顔になったり。たくさんの時間を台所で過ごし、ごはんをつくる。その小さな幸せを積み重ねることで、豊かな暮らしは生まれるのでしょう。
台所は、私たちの「暮らし」そのものなのです。
<撮影/大森今日子 取材・文/宮下亜紀>
檀 太郎・晴子(だん・たろう、はるこ)
共にエッセイスト。太郎さんは作家・檀一雄の長男でCFプロデューサーとしても活躍してきた。2009年福岡の能古島へ移住。太郎さん最新刊『檀流・島暮らし』(中央公論新社)、晴子さん『檀流スローライフ・クッキング』(集英社)など著書多数。