(『天然生活』2024年10月号掲載)
自分の感情と向き合い、その日一日をふりかえる
皆さんは「内観」という言葉を聞いたことがありますか? 今回の取材中、植物療法士の佐藤さんが何度も口にした言葉です。
「心理用語なのですが、自分自身の内面の状態や感情をじっくり観察し、自分と対話をすることです。『今日はどうだった?』と心の中で自分に話しかけたり、『あのときはよくがんばったね』とねぎらったり。その日一日を振り返るんです。
たとえば、日中、何かつまずきが起きたとします。そのときには、受け流したり、のみ込んでしまうこともあるはず。そんな感情と再び向き合い、分析や肯定をすることでマイナスの感情もため込みにくくなるんですよ」
朝晩の内観で、自分の中にしっかりとした軸が

「内観」は最も大切にしている習慣。あぐら姿勢になり、目を軽くつぶり、心の中で自分にやさしく話しかける
佐藤さんはその「内観」を朝と晩に行うことを日課としています。朝は、今日をどんなふうに過ごすのか? という未来に向けたもので、夜は一日を振り返り、過去と向き合うものです。これを数年前から行うようになって、自分の中にしっかりとした軸ができて、ちょっとしたことで心がざわつかなくなったと穏やかに話します。
「若いころから、どうも心が不安定だったんです。自分の存在価値がわからず、生きづらさを感じてしまっていたというか……。でも、3人の子どもの母となり、植物療法と出合ったことで変わりました。心がぐっと軽くなったし、家族全員、体調不良やちょっとしたけがをほぼ薬に頼らず対処できるようになりました」
それにより免疫力が高まり、以前より心身が丈夫になったよう。自分に自信がもて、何より、「人生って楽しい!」と前向きに。
植物のパワーにいやされ元気づけられ、すこやかに
植物療法が目指すのは、本来、私たちに備わっている自然治癒力を高め、自分で立ち直れる力を養うこと。
佐藤さんはそのときどきで感じている体の症状や心の不調に対して、「これにはこの植物」と無数の植物の中から選び取り、処方をします。
ハーブティー、植物のエッセンス、オイルのマッサージなど、方法はさまざま。内と外からケアし、穏やかに整えます。

エルボリス社と自家製のセントジョーンズワートオイル。足腰の疲れを和らげる
気持ちも、体も滞りなく。常に、耳を傾け、「大丈夫?」と問いかけることで、佐藤さんの暮らしはすこやかに保たれています。
家事や仕事、3人の子どもたちのお世話で息つく暇なく一日を駆け抜けてきた佐藤さんが、ほんのちょっと立ち止まれるのが夜のひととき。
少しだけ自分だけの時間を確保し、「お疲れさま」と慈しむ数十分が、佐藤さんを強くしなやかに整えてくれています。
佐藤さんの「夜時間の相棒」
バイブルのような本

ふせんがびっしりと貼られ、ボロボロになった本は『チャクラ――癒しへの道』(サンマーク出版)。ホメオパシー療法医がチャクラ(人体にあるエネルギーの出入り口)について説いている。「私にとってバイブルのような、辞典のような大切な一冊」
〈撮影/林 紘輝 構成・文/鈴木麻子〉
佐藤景子(さとう・けいこ)
栃木・宇都宮で「keica」を営む。植物のエネルギーを取り入れたフィト菓子の販売、心と身体をいやす「ジェモセラピー」を提案するほか、植物療法を使ったコンサルテーションも行う。日本ジェモセラピーカレッジ宇都宮校・講師。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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天然生活2025年10月号では「整う夜の時間割」の特集をしています。夏の疲れをいやし、心と体を整える夜時間は明日の元気をつくる大切なひととき。ぜひあわせてお楽しみいただけましたら幸いです。