(『天然生活』2024年9月号掲載)
絵本の中で輝くのは、いい子よりも、面白い子
絵本の中で生き生きと輝くのは、「いい子よりも、面白い子」だと万里子さんはいいます。
「自分の子にされると困っちゃうことでも、よその子ならば面白いことって、ありますよね。『冷蔵庫におもちゃをしまっていた』なんて、親からすれば不衛生だとか、扉を何度も開けてほしくないとか、あるかもしれないけれど、たぶん、冷蔵庫って子どもにはとっても魅力的なんです。おいしいものが次々と出てくるし、扉を開けるとピカッと明かりがつくし。何か事件を起こしてしまう子どもの、その子なりの理由を想像したくなります」
万里子さんのつくる絵本には、登場人物の心の機微が描かれています。ひとりで留守番をする心細さ、知らない場所に出かけるときの高揚感、友達をほかの子にとられちゃったようなさびしさ。「そうだったんだね」と、ただただ認めてくれるような万里子さんの眼差しの温かさが、読む人の心にも染みてくるのです。

「自分の納得のいくような絵が描きたくて」と、万里子さんは毎日1枚、子どもたちの様子をスケッチしていた。50冊以上にのぼるスケッチブックには、そのときにしかない「家族のいま」が切り取られている
一方、父・弘さんのつくる絵本は、枠にはまらないユニークさが持ち味。ペットにおしっこをかけられたとか、家族の寝言がびっくりするほど大きな声だったとか、印象的な出来事のシーンから物語を組み立てる弘さんの絵本は、いい意味で予想を裏切る展開です。
タイトルにもなっている重要なキャラクターの出番が一瞬だったり、主人公の唐突な決意表明で幕を閉じたり。それでも、デフォルメされた大胆な構図から弘さんの心の振動がストレートに伝わり、読んだ人は「面白かった!」と笑顔で本を閉じるのでした。
万里子さん、弘さん、どちらの絵本にも共通なのは、登場するキャラクターのいとおしさ。のちに「手づくり絵本展」を催した際には、そのキャラクターたちが弘さんお手製のぬいぐるみになって、お客さんを出迎えました。その話をする前に、さて、町田家の家族の歩みを少し紹介しましょう。

万里子さんと弘さんが手づくりした絵本の一部。キャラクターのぬいぐるみは、絵本展用に弘さんが縫ったもの。毛糸の帽子やマフラーは、来場者の方が編んでくれた
〈撮影/星 亘 構成・文/石川理恵〉
まちだファミリー
母・万里子さんは元小学校教師。長男の穂高さん、長女のはる香さんの育児中は専業主婦になり、手づくり絵本を通じて地域活動に励んだのち、教師に仕事復帰。現在は病気療養中。父・弘さんは元高校教師(化学)。2016年より「ヒロシとマリコの手づくり絵本展」を開催し、縁のある場所を巡回。インスタグラム:
@mahiro_publishing
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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万里子さんと弘さんの手づくり絵本展が開催!
会場では手づくり絵本を手に取ってご覧いただけます。
家族の思い出がつまった、世界に1冊の絵本の魅力をお楽しみください。
「ヒロシとマリコの手づくり絵本展 in Toshima city at 豊島区立熊谷守一美術館」
● 開催日時:2025年10月28日(火)〜11月2日(日)
10時30分〜17時30分(最終入場17時まで)
※最終日は16時閉場
● 観覧料:無料(常設展示は有料)
● 会場:豊島区立熊谷守一美術館3階ギャラリー
https://kumagai-morikazu.jp/
詳しくはこちらから
https://kumagai-morikazu.jp/exhibition/rJfQ56fk
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